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第45話 枷
「それにさ、君が魔王になったら、メグルが異世界に呼ばれなくなるかもしれないよ」
「何」
「えッ」
ザックの言葉に二人は言葉を失った。
「それはなぜだ」
「君がメグルを縛れるからだよ」
「俺が、メグルを?」
「うん。メグルは今、メグルの両親の祈りによって色んな世界に飛ばされているのかもしれない。でも、メグルが本当の意味でバリヤのものになって、逃げられなくなれば、その契約がメグルを縛る枷になる。どこにも飛び回ることはできなくなるんだよ」
「待て。俺は人間を縛ったりする趣味は無い。メグルに酷いこともしたくない。一体何の話をしてる?」
「結婚だよ」
「「「結婚!?!」」」
バリヤと巡だけでなく、ミウェンも驚いて口を揃えた。
「なんだよ。バリヤはメグルと結婚したくないの?」
「するしない以前に、俺はスライムだしメグルは人間だ」
「この世界での結婚ってどんなのですか?」
「バリヤ様は、メグル殿とお付き合いされてかなり日が浅いのでは……」
それぞれに思ったことを口に出す三人に、ザックは言った。
「関係ないよ。
好きなら結婚すればいいじゃない。それに、結婚で互いを縛るのは束縛じゃない。好きって気持ちを宿し合うだけだよ」
異種族間の結婚なんて珍しくもないし、とザックは続けた。
「ま……待ってください」
それに待ったをかけたのは巡である。
「もしザックさんの言う通りだとして……結婚もして……俺は、元の世界には帰れなくなるんでしょうか?」
「う~ん、それはわからないよ。だって元の世界に戻るのは、他の世界に飛ぶのとはちょっと違うじゃない。新しい道を行くんじゃなくて、元居た世界への道を戻るだけなんだからさ」
そこで突拍子もない決断を下すのがバリヤである。
「わかった。魔王になろう。その代わり俺はメグルと結婚する。メグルは他の世界へ召喚される心配がなくなる」
「う、う~ん……」
「いいじゃないか。ねっ、メグル」
「メグル殿……」
バリヤは本気で巡を自分のものにする気だった。
「寝室にはベッドと浴室をよこせ」
神官のエクストレイルの元を訪れたバリヤの突きつけた条件はまずそれだった。
勿論、睡眠も入浴も必要がないスライムの為ではなく、巡の為だ。
「……では、魔王様になっていただけるのですね?わかりました。手配しておきましょう」
頷いたエクストレイルは魔界へと出かけて行った。
ザックとミウェン、巡が待っている部屋へ戻ったバリヤはその事を3人に報告した。
「バ……バリヤさん……あの、本気ですか?結婚……」
「メグルがその気になるまで待つ」
「その気になるって……交際0日婚とかスピード結婚とかしちゃう夫婦ほどすぐ別れるんだから!俺達気持ちが通じ合ってまだ数日ですよね!?結婚は早いですよ!!」
「数日は経っているから0日婚ではないし別れるつもりもない」
「エ、エエ~」
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