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第46話 巡のために
ミウェンが心配そうに巡の顔を覗き込んだ。
「メグル殿は結婚に乗り気ではないのですか?」
乗り気ではないというか、乗り気ではあるが結婚することによる縛りがでかすぎるというか。
「いえ……そういうんじゃないんですけど」
「じゃあどうなのさ」
「結婚、したいですよ、俺も、そりゃあ」
なんといってももう25歳である。
元の世界では早ければ20歳辺りから、同級生や年の近い人たちの結婚ラッシュは始まっていた。
自分が男だからと結婚が少しくらい遠のいている現状にもなんとも思わず、30代半ば頃に結婚出来れば良いかなどと考えていたのだ。
男だから結婚が遅くても良かったということを除けば、そりゃ早く結婚したいに決まっていた。
人間としては男同士だが、バリヤは分裂して子供を作ることができるし、たとえそれが人間でなくとも好きな相手との子供なら見てみたいし育ててみたい。
元の世界では彼女すらいなかった巡に自分を愛してくれる最強のスライムがこの世界では居るのだ。
結婚上等。夢のある話だった。
「まあ、人間の寿命は短いから結婚や恋人を作ることに躊躇する気持ちもわからんではないけどね。
僕みたいにエルフは長寿だし、スライムなんて一体何年生きてるかもわからないし、相手を一人残して80歳程度で死んじゃうことを考えたら結婚なんて軽くはできないよね」
ザックがしみじみと言った。
エルフは長寿というのは初耳だが、巡が心配しているのはそんなことではない。
しかしこの解釈は今の巡にとって都合が良いことだった。
「そ、そうですよ。バリヤさんだって俺が死んだ後、魔王として一人で生きるなんてできるわけありません。
どうせ俺の後にすぐに恋人でもなんでも作ってすぐに相手を見つけるんでしょうし、結婚なんて俺じゃなくても」
「メグル」
ハッとして見れば、ザックはにやけ顔で、ミウェンは顔を真っ赤にして、バリヤは少しぽかんとしたような表情でこちらを見ていた。
「お前は、妬いているのか」
「えっ」
そんなつもりではなかった。
が、今自分の言ったことを思い返してみれば、そうとも取れるような発言だった。
バリヤが巡を抱きしめる。
「心配するな。メグルが居なくなっても、俺はメグルだけだ。
他に好く奴などいない。
たとえ俺があと何百年生きようともだ」
「あっ……」
カッと頬が熱くなった。
そういうつもりで言ったわけではなかったのに。
カッと赤面する巡に、バリヤは言った。
「言っとくが俺はメグルの異世界召喚体質を止めるために魔王になり、結婚したいと思っている。
メグルが俺と結婚しないのなら魔王にはならないし、今まで通りメグルを守るだけだ」
全部巡の為だったのだ。
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