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第47話 元の世界

「俺は他者から魔力を貰うこともできるが、巡にやったようなことをするならメグルとザック以外とは魔力の受け渡しはしたくない。  どうすればメグルは俺と結婚したくなる?」  そんなことを言われては、巡のハートはキャパオーバーのオーバーキルだった。  今まで人に、こんなにも愛されたことなどなかったのだ。    元の世界に戻れなくても、この世界で最高の人生を生きれるんじゃないのか。    元の世界ではキャリアとは程遠い工場職員だった。  彼女もいなかった。  家族とも、一人暮らしをしだしてからは疎遠で。    今、ミウェンに見守られ、ザックとは魔力の受け皿という強い結びつきで関係が保たれ、スライムである兵長のバリヤとは恋人同士。そのうえ恋人は魔王などという重大なポストに就くらしい。    どう考えても、今が恵まれすぎているようだった。    自分一人くらい、元の世界で失踪したとて大した問題にならないんじゃないか。  そう考えて、ふと今までの世界での自分はどうなっているのかと、記憶を反芻した。  巡は今までに2回、死んでいる。一度目は魔力が無くて、二度目は飛んできた屋根に巻き込まれて。  元の世界に戻れたら……なんて悠長なことを考えていたが、これまでの経験に基づくと、元の世界の巡は死んでいるのではないか。  いや、おそらく死んでいる。  この世界に来てからも一度召喚されかけたとはいえ、異世界に呼ばれやすい体質だから次の世界の飛んでいたのではなく、前の世界で死んだから次の世界へ行ったのではないか。  つまり、この世界から別の世界に召喚された時も、もしあのまま召喚されていたらこの世界の巡は死んでいたのではないかということだ。  もし今の状態で元の世界に戻ったら、死人が生き返ったということになるか、元の世界では死んでいるのでそのままこの世界でも元の世界でも死んだまま終わりか。この二択の可能性が高い。  そうなるよりかは、この世界で結婚して異世界に召喚されないように努めるのが一番の解決策ではないか。  というか、そんな状況で誂えたように魔王と結婚できる手筈が整っている今の状況は巡にとってとても都合が良い。 「……結婚、します」  巡は小さく返事をした。

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