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第49話 契約の証

 翌日、バリヤはザックの元へ巡を置いて魔王城に来ていた。 「俺はカルタスだ」  オークの青年が自己紹介をする。  他の貴族もそれに続いた。 「俺はグラン。狼男だぜ」 「あたしはエリーン。サキュバスよ」 「……」 「彼はドラグーン。ドラゴンです。600歳ほどらしいので、この中では最年長になります」  エクストレイルが、ドラグーンの代わりに紹介した。  ドラゴンは言葉を話さないらしい。  転移した先は大広間のようになっており、ドラゴンのドラグーンが出入りできるようになっていた。 「俺はバリヤ・オノルタ。7歳だ」 「存じております」 「魔王には種族も年齢も関係ないのか」 「当代の貴族たちが認めればそれで良いというシステムですので」  カルタス、グラン、エリーン、エクストレイルが片腕を差し出した。 「契約の魔法の証は手の甲に記されます。バリヤ様が魔界とこの世界の平穏を守る存在であることの証になります」 「俺はスライムに戻ろう」  バリヤがぷるるんと巨体のスライムに変身した。 「この場合はどこに刻印されるんだ」 「いや、わかりませんけど」  手の甲も何もない姿かたちのバリヤにエクストレイルたちは困惑した。 「しかし、魔力の塊であるスライムがここまでの体積になるということは、私たちの目に狂いはなかったようです。  早速契約の魔法を始めましょう」 「わかった」  彼らが一斉に契約の魔法を唱え始める。  バリヤはじっと黙って詠唱を聞いていた。  魔法陣が各々の手の甲に浮かび上がる。  魔法を唱え終わり、スウッと一人一人の手の甲に契約の証が刻み込まれた。  ドラグーンの前足にも証は現れた。  そしてバリヤの巨体の前面にも証が印された。 「これで、あなたは今日から魔王様です。世界のために働いてくださるようお願いします」 「第三兵団は副兵長にも任せることになった。魔王としてはメグルと共に任務に励もう」 「ありがとうございます。瘴気のコントロールや魔物の統率をとるくらいは今の時点でもできるようになっていると思いますから、なるべく勇者の力を借りなくても良いようにお願いいたします」 「ああ。今日から魔王城に住むことになるのか?」 「ええ、魔王様ですから」 「では国に戻り報告して来よう。メグルも連れてこなければならない」 「わかりました。お部屋の準備は整えておきましたのでご自由にどうぞ」  人型に変身したバリヤは転移魔法でアルストリウルス国に戻る。  この国でのバリヤは騎士団第三兵団の兵長だ。  兵長を辞めるつもりはなかったが、魔王として魔界に住み、勤めを果たさなければならなかった。

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