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第50話 結婚
「メグル」
「ウワッ」
ザックの部屋に戻ったバリヤは巡に声をかけた。
「メグル、俺は魔王になった。
これから第三兵団の寮を引き払わなければならないし、魔界にメグルを連れていくために結婚して俺の伴侶であることを国に知らせなければならない」
「あっ、えっ、今結婚するんですか」
「そうだ」
「今って、ミウェンさんも居ませんし、魔界の貴族さんたちも居ないじゃないですか!結婚って親しい人や近しい人と一緒に見届けるものなんじゃ……」
「そうなのか?」
「いいじゃないか。今結婚しなよ」
ザックがポンポンと考えなしに言い放つ。
バリヤはムードも何の用意もない急な結婚に躊躇いもない様子だ。
「えっ……」
絶句する巡をよそに、バリヤがメグルの左腕をとった。
何かバリヤが魔法を唱え始めた。
「えっ、ちょ、待っ……」
左手の薬指に光によって生成されたリングが現れた。
バリヤの指にもリングが現れる。
「これでメグルは今日から俺の伴侶だ。魔王城に一緒に住むことになる」
「今のが結婚ですか!?!」
「そうだ」
「バリヤさん」
「なんだ」
「また今度でいいですから、絶対、絶対結婚式挙げましょうね」
「わかった」
明らかに必要性を感じていないような態度だが、二つ返事でOKを貰えた。
「魔法でできてましたけど、指輪の嵌め直しとかってできるんですかね?」
指輪を外そうとするが、外れない。
バリヤがドプンとスライムに戻った。
「スライムに戻ってもリングは吐き出せないぞ」
「指輪がッ……!核 みたいになってるッ……!!」
指輪がスライムの中心で光り輝いているのがスライム越しに滲んで見える。
「それくらい、結婚の魔法は強固なものということだ。これでメグルが他の世界に飛ばされることもなくなるだろうし、仮に飛ばされてもこの世界の魔王の伴侶という肩書があればこちらの世界から召喚できる」
「それは良かったです」
二人は国に今後のことを報告することにし、ザックの部屋を後にした。
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