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第55話 魔力の受け皿

「メグル!!僕だよ」  ザックがバリヤと共に魔王城にやってきた。  バリヤは普段、魔王城からアルストリウルスへ通う際には転移魔法を通じて移動する。  ザックも転移魔法が使えるので、魔法で魔王城までやってきたのだ。 「ザックさん。お久しぶりです。どうしたんですか?」  久しぶりの再会に少し胸が熱くなる。  ザックはいつも通り、ぼさぼさ頭に瓶底眼鏡。魔王城に来るからといって何か違う様子はなかった。 「魔力の受け皿としての仕事をしてほしくてね」 「あっ……そういえば、そうでしたね」  巡はザックの魔力の受け皿2号機である。バリヤだけでは魔力の分散が足りないときに、巡がその役を務めることになっていた。 「じゃあ、はい」  握手するように手を伸ばすと、困ったように「いや、それがね」とザックは自身の頭をポリポリとかいた。 「今回の魔力は手だけじゃ足りないんだ。できればバリヤに魔力を受け渡ししたときみたいに全身でやって欲しい。じゃないと僕の中の魔力が全然減らないんだよ」 「なッ……」  何も、行為をしろと言われているわけではない。  ハグなんかでも可能な範囲だ。全身が引っ付けばいい。  しかし巡はバリヤとのことを思い出して赤くなった。 「それは駄目だ」  そこに突っ込んできたのはバリヤである。 「ちょっとハグするだけだよ」  ザックの言葉にバリヤは首を振る。 「メグルは俺のものだ。ザックとそういうことをするのは認められない」 「じゃあどうするのさ。僕の魔力はバリヤにも結構渡したとはいえ、すぐに回復してしまう。魔力暴走を起こさないように魔力を誰かに分けないと。新しい魔力の蓄積装置もまだできてないしさ」  ザックは魔力を誰かに渡さないと大変なことになってしまうらしい。 「……あ、そういえば」  巡は思い出した。  そういえば一人、魔力をどれだけ渡されても大丈夫であろう人物が一人だけ、居るのだ。 「あのう……ザックさんの魔力、どうにかなるかもしれません」 「え!?本当かい!?」  巡とバリヤとザックは神社に出向いた。 「異世界人間よ!よく来たな」  神は上機嫌で巡を出迎える。  よほど暇なのだろう。誰も寄り付く気配のない神社の中で神は一人で毎日を過ごしていた。 「これが……神様」  ザックが気圧されるように呟く。 「後ろの魔物とエルフは何者だ」  神はバリヤの正体を一発で見抜いた。 「た……食べないでくださいね。彼は、魔王様で、俺の伴侶です」 「魔王?この魔力の塊が、か?」 「彼はスライムなんです」  スライムは、魔力の塊でできている。成り立ちは神と大して差がない生き物だが、スライム状の身体を持っているモンスターだ。

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