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第62話 サキュバス監修

「死ぬ前の人間にしてはやけにあっさりお別れしてくれましたね」  エクストレイルがバリヤに向けて呟く。 「そういう人なんだ。彼は全てにおいて大雑把だ。だから魔獣に襲われて死んだりする」 「そ、そうですか」  まあ、そういう人間も世の中にはいるだろう。騎士団の兵長にまでなる人がそんな性格でどうするのだ、とは思うが。 「じゃあ次の石台は……」  3つある右端の石台に移動する。  巡も慣れてきたので、気合を入れずとも魔力を流し込むことに成功した。  石台の魔法陣がカッと光り、バリヤとメグルの腹の辺りにカカカッと新しく魔法陣が展開された。 「!?」 「なんだこれは」  巡とバリヤが動揺する。  エクストレイルが石台の側面に書かれた説明文を読み上げた。 「これは……」 「なんだ」 「魔法を使用した者と、その愛する者の腹に淫紋を施す魔法ですね」 「急にエロい!!」  なぜだ。  願いを叶える魔人、死者を呼び出す魔法と来て次がなぜそんなエロ漫画の定番のような魔法なのか。 「サキュバス監修……と書いてありますね。淫紋の効果は本物でしょう」 「あの露出女……!」  バリヤが憎々しげにサキュバスのエリーンを呼ぶ。 「待ってください。エリーンはまだ20歳です。この魔法を作ったのは異世界人間が魔王様だった時代のサキュバス、つまりエリーンの先祖です。エリーンは何も悪くありません」  エクストレイルがバリヤを止める。 「チッ……」 「俺が魔力を流すのを辞めたら魔法の効果が切れるなんてことはありませんか?」  巡は試しに魔法陣に流していた魔力を止めた。  着ていたローブをペロンとたくし上げ、自身の腹を確認する。 「消えない……!!」  バリヤも着込んでいる服を捲り、腹を確認する。割れた腹筋の下腹になだらかに淫紋と思われるであろう複雑なハート形の印が光っていた。 「えーと……僕は、お邪魔になると思いますのでそろそろ失礼しますね」 「えっちょっ!?」 「これは何をしたら消えるんだ」  バリヤが最後にとエクストレイルに一応、聞いておく。 「わかりません。もしかしたらずっとついたままかも……」  エクストレイルは小さく笑って去って行った。 「メグル。身体に異変はないか」 「ええ、まあ……。バリヤさんのその淫紋、どうなっているんですか?」  見たところ巡に施された淫紋と同じものだ。  するりと巡がバリヤの腹を撫でてみると、淫紋がチカッと光った。 「っ……」  バリヤが息を詰める。 「メ、グル。触るな」 「えっ」  若干ショックを受けてバリヤの顔を見る。  バリヤの顔は上気し、息が上がっていた。

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