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第63話 抱くしかできない
「この淫紋は……触られたり、おそらくだが性的なことをすると効果が出るのだろう。それまでは問題ないが、触れられると駄目だ。騎士団の訓練までにはどうにかしなければならない」
「えええっ。……こういうのは、定石としてはいっぱいエッチしたら消えますけど……」
「それは本当か」
「本当に消えるかは試してみないとわかりません」
「……わかった」
と、突如バリヤがスライム体に戻る。
ぷるるんと揺れながら体積の大きなスライムは喋る。
「スライムに戻れば効果はないかもしれない。メグル、触ってみろ」
魔界の貴族たちと結んだ魔王の契約の証のすぐ下に、淫紋は小さく印されている。
巡はそっとスライムを撫でてみた。
「っく……ん」
バリヤがうめき声をあげる。
「ダメだったんですね……」
「ああ、駄目だ」
シュルルと再度人間になるバリヤ。
「こうなりゃバリヤさん、腹くくりましょう」
「……やるつもりか」
「ええ。正直俺達、長い恋愛よりも先に結婚なんてしちゃって愛は二の次って感じでしたけど、今からでも愛を育むことはできます。今の俺たちにできる、唯一のことです。やりましょう、バリヤさん」
「メグルは俺のことが好きじゃなかったのか。俺は二の次だなんて思っていない。ずっと好きだ」
「……!お、俺も好きです……」
「そうか。なら問題ない」
ふ、とバリヤが笑う。
二人して部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。
腹に宿った淫紋がどんな働きをするのかいまいちわかっていなかったが、肌を撫でられるだけで体中をゾクゾクとした快感が駆け巡り、淫紋が光る。
淫紋が光ると感度が上がる魔法なのだと悟った。
巡は元の世界の漫画などの知識で腹に精を受け止めれば淫紋が消えるのでは、などと推測するが、一つ問題があった。
バリヤは人間に擬態したスライムであって、人間ではないのだ。
「バリヤさん。射精ってできますか」
「できるが、人間の精液とは違う。魔力を精液の代わりとして吐き出すだけだ。メグルの腹の中に出せばメグルに俺の魔力が受け渡されることになる」
「……魔力がいっぱいになりすぎたら、俺が魔力暴走を起こすってことですよね、それは」
「そうだな。……なるべく外に出す」
「それだと淫紋が消えない可能性があるんですよ」
巡はその可能性についてバリヤに説明した。
「それでは、俺もメグルから精を受けないと駄目だということになる。そんなことはないだろう。スライムの中には射精できない」
「そ、そうですね」
スライムの中に混ざる精液を想像してグロいな、と考えを止める。
おそらくバリヤの尻にも巡のモノを挿れられんことはないのだろうが、ナカは腸壁でなくスライムである可能性が高い。
なにせアノマとの決闘で半分に切られた時の断面がスライムである。表向きの模倣は上手くできていても、細かいところはそのままスライムなのであろうことは想像に難くなかった。
「だからメグル」
「はい」
「俺はお前を抱くしかできない。スライムだから俺の中に挿れることは諦めた方が良い」
「大丈夫ですよ」
「なるべく、気持ちよくしてやる」
「は、はい……お願いします」
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