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第65話 異世界の魔法

「僕だよ!」 「お邪魔します」  ザックとミウェンが現れた。  ザックの転移魔法の中からミウェンも一緒に登場する。 「ミウェンさん!」 「メグル殿!」  二人の感動の再開の傍らでザックはキョロキョロと誰かを探す。 「どうしたんですか、ザックさん」 「いや……神は?僕、魔界の生き物の生態も研究したいんだけど、神の生態が今一番研究したいんだよね」 「神なら、今日は神社だろう。いつもはメグルに引っ付いて歩いているが」  正確には巡に引っ付いて浮遊しているのだが、そこはどうでもいいのだろう。 「それよりザック、別の部屋に異世界人間しか扱えない魔法陣がいくつかある」 「何それ知りたい!」  巡とバリヤはエクストレイルと共に体験した石台の魔法を語った。 「なんでも願うだけで願いを叶える魔人?死者を死ぬ前の時間軸から呼び出す魔法……?魔法陣に、対象物や人物指定を書き足さなくても実行できるのかい?」 「はい。願うだけで……」 「そんな魔法、この世界には無いよ。きっと異世界の魔法をそのまま使ったんだろうね。だから異世界人間の魔力にしか反応しないんだ」 「そうか。それから淫紋を付ける魔法が……」 「バリヤさん!!」  巡の制止も聞かずにバリヤが話し始めてしまった。 「え?何?淫紋?サキュバスやインキュバスが使うアレのことかい?」 「そうだ」 「付けられた淫紋はどうなったの?」 「消した」 「……消した?アレはサキュバスやインキュバスの意志でないと自由にはできないはずだよ」 「ああ。だから……」 「バリヤさん!!」 「え?何?寝たの?」 「…………。」  黙りこくる巡に、ザックが「ほーん。ふーん。へー」と生暖かい視線を送る。ミウェンは顔を真っ赤にして黙っている。 「仕方ないでしょう。他に方法が思いつかなかったんです。あんなのがずっとついたままだと不便だし……」 「そうだよね。本来とっても気持ちよくなっちゃうための淫紋だもんね」 「笑ってんじゃねーよ!」  鼻で笑うザックに巡が吼える。  バリヤがまた、愛の言葉で解除できるものだったのではないかということをザックに報告する。 「まぁ、その可能性はあるだろうね。実際、サキュバスとインキュバスがいない状況で淫紋を施したり、消したりできるということの方が不自然なんだ。なんらかの事象がトリガーになってないと自然に淫紋が消えたのはおかしい。それに、異世界人間が魔王だったということは、その魔王は目的があってそんな魔法を残したんだろうから……。まぁ、本人も使ったんだろうね。バリヤの話通りなら、辻褄が合うよ」  異世界人間の魔王は、心ではなく身体から相手を手に入れたということだろう。  愛してるという言葉が得られるまで。  巡とバリヤは心が通じ合っている者同士だったので早々に淫紋が解けたが、もし巡がバリヤを好きなだけでバリヤが巡のことを想っていなかったら、「魔法を使用した者と、その愛する者の腹に淫紋を施す魔法」を使用した後大変なことになっていただろう。

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