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第67話 破れば死ぬ

「嫌に決まっておろうが」  巡たちが神社に来て早々、事情を話すも神は二つ返事で拒否した。 「なぜ神が人間界などに堕ちなければならぬのだ。魔界の魔力が我らの根源。人間界などに用はない」 「その魔界に住む魔王の命令だ。逆らうな」  バリヤが神に魔力を纏った剣を突き付けた。 「……たとえ魔王の命令であろうとも、神は魔物の範疇に無い。命令を聞くいわれはない」  フッと神が魔剣に息を吹きかけた。  魔力は吹き飛び、剣はボロボロに朽ち果てた。  巡たちは信じられないものを見たかのように目を見開く。  いや、実際に起こったことだった。  魔力の塊が神を生み出すのだとしても、神は魔力よりも強いらしい。  黙っていたザックが神に近付く。 「ねえ、君。この前僕にしたこと、忘れたわけじゃないよね」 「……お前は。エルフ」 「僕の魔力がそろそろ欲しくなってきたんじゃない?僕も、魔力の回復は早い方だからさ……」 「だから何だ。また魔力を我にくれてやるとでも?」 「君が望むならね。僕の魔力は、美味しかっただろう?他の魔力じゃ薄くて弱くて、不味くてもう食べられないはずだ」 「……」  神の目線が、ザックの眼鏡の向こう側、瞳へと移る。  ザックは目線を外さずにけしかけた。 「僕と時々人間界に行ってくれるだけでいい。僕の魔力を君にあげるよ。もちろん、魔力の受け渡しをする以上、あの日したようなことを僕にしても良い。気持ちよかっただろう?」 「……!」  神の瞳が動揺して揺れる。  ザックの魔力はよほど極上だったのか、期待でごくりと唾を呑み込む。 「アルストリウルス国に通うことを約束してくれれば、僕の魔力を僕が死ぬまでの間、君が食べても良いよ。エルフは長寿だから当分美味しい魔力にありつけるはずだ。他の神様に僕の魔力をやるようなこともない。君だけが僕の魔力を食べて良い」 「……神との約束は破れば、死ぬ」 「それでいいよ」  ザックは迷いなく約束を決めた。

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