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第72話 どうしたのですか?

「ねえ~。一週間で良いんだ。泊めてよ~」  魔王城にて、そんなバリヤに縋りつくザックである。 「なぜだ。魔王城には人間らしい暮らしができる部屋は埋まっている。自分の部屋へ戻れ」 「僕エルフだし魔法でどうにかするから関係ないよ~。ねええええ~」 「黙れ」  魔王専業となったバリヤになおも絡みつく。 「ザック様……どうしたのですか?」  心配になったのか、エクストレイルが横から聞いた。 「俺が兵長を辞めたから国に戻りたくないそうだ」 「僕は国で一番魔力が高いだけじゃなくて、僕の持ち物のバリヤが兵長だったから特別地位が高かっただけなんだ。それが魔力だけの普通の魔導士たちと同じになってみろよ。僕の地位が下がったことを喜ぶ奴は沢山いるんだよ。あんなところにはほとぼりが冷めるまで行きたくない……それに魔界の生物の生態研究だってしたいし」 「最後のセリフが一番の本音だろう。魔界の研究など人間界に報告されてまた戦争沙汰になったらどうする。帰れ」 「酷いよ~。バリヤが僕に酷いよ~っ」 「貴様が魔王城に寝泊まりするとなるとメグルと俺の部屋になる。邪魔だ」 「酷いよお~!!二人の邪魔なんてしないよ!寝たかったら寝ればいいじゃない!僕の目の前で!」 「瘴気か貴様」  ゴンッとザックの脳天にバリヤの拳が入った。 「痛いよお~!!」 「そんなに帰りたくなければ神の所にでも行け。あいつの社に居れば雨風は防げるだろう」 「……。対価は魔力でいいかな?」 「俺に聞くな」  魔力を差し出すとなればやることは決まっている。  バリヤにそれを聞かれても答えられることではなかった。 「メグル」 「なんでしょう」  一部始終をオロオロしながら見ていた巡の頭をバリヤは撫でる。 「大事な時に、守ってやれなくて悪かった。メグルを守ることより国王を攻撃する方を優先した」 「そんな……。あの時は仕方なかったでしょう。俺はただ行っただけで何もできなかったし」 「勇者が来なければあのまま国王を殺していたかもしれない。そうなれば本当に戦争に発展するところだった。俺は勇者に助けられただけで、メグルの為に何もしてやれなかった」 「それ以上言ったら、駄目ですよ。そうですね。それでも悪いと思うなら……じゃあお詫びをしてください」 「詫び?」 「はい」

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