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第15章 破綻3※

 身体の奥までじんじん響くような低い男の声がする。眼前には細枝のような自分の身体とは異なる鍛え抜かれた筋骨隆々とした身体があった。  頭を横へ振っていれば、「よかった」と男のほっとしたような声がする。  男はボディーソープを手に出し、白くきめ細やかな泡を作ると、おれの耳や首筋から手首に掛けて大きな手を滑らせた。自分ひとりでは風呂に入れない人間を介助するような動きだちというのに発情しているおれは、それだけで感じてしまう。 「やっ!」 「少し我慢してくれ。クソッ、あの男……こんなところにもキスマークなんてつけやがって……」  大きな手が胸に触れ、腹部へ移っていき、足首や太ももも、足の付け根も念入りに洗われる。 「手首や足首に手のあざがついてる。もっと早く来れなくて、ごめん」  涙声で謝ってくる男の顔が、なぜかよくわからない。  ただ彼のうなだれた姿を見ていると、こちらまで悲しい気持ちになってくる。  男の頭を胸元へ抱き寄せる。 「泣かないでくれ……おれは大丈夫だから」 「俺が大丈夫じゃない。怖かったんだ。あなたを取られるんじゃないかって気が気でなかった」  胸の中から出ていった男は、おれと目線を合わせると目をつむり、触れるだけのキスをしてきた。  初対面の男にキスをされているのに、いやじゃない。むしろ心地よさを感じる。  何度も、何度も角度を変えて唇をついばむのに、それ以上のことはしてくれない。こちらから舌を出し、彼の温かい唇を舐めてみれば、彼は目を見開いて飛び退()いた。  全身、真っ赤にさせて泡がついた指先で自分の唇に触れている。 「いや、だったか?」  数秒間、間を開けてから、まっすぐ目を見つめられる。 「……いやじゃない」  両頬を包まれ、唇を奪われた。  舌を出して舐め合う。ぎこちない動きをしているのに少し触れただけでも、パチパチと炭酸が弾けるような刺激がして頭がクラクラする。  彼の首へ手を回し、もっととせがめば深く口づけられる。互いの口の中で舌を絡ませ合った。  シャワーのしぶきが肌を打つ中で、おれのものは天を向き、涙を流していた。  息の上がった彼の熱い息が掛かる。おれは幼い子どもの頭を撫でるみたいに彼の髪を撫でていた。 「……ここも触られていたな。そうだろ」 「そこは……!」  体液で濡れそぼった尻の合間に指が触れる。どの部位よりも丁寧に洗われ、羞恥で頬が熱くなる。  身体を起こされ、ゆっくりと身体を反転させられる。  曇りガラスにおれと男の身体が映る。  男の分身はも、おれと同じように上を向いていた。血管の浮き出た赤子の腕ほどもありそうなものの先端は赤黒くなっていて、鈴口から我慢汁をダラダラ出していた。 「うわっ!」  シャワーを突然頭から掛けられて驚きのあまり叫んでしまう。子どもの身体でも洗うように耳の中に泡が残らないようにお湯を掛けられたり、手を上げさせられたりする。そうして尻の間や足の指の間もシャワーをあてられる。  ボディーソープがすべて排水溝を流れていくと男の手が、おれの勃起したものを包みこんだ。 「あっ……」  大きな手で数度しごかれただけで早漏のように射精してしまう。  鏡に白い白濁液を掛け、汚してしまった。男の腕の中でくたっとしていれば、こめかみに唇がチュッと音を立てて触れた。 「そのまま鏡に手をついて立っていてくれ」と言われ、わけもわからずに言う通りにする。  男の身体が鏡から消えたかと思うと尻を割り開かれ、生暖かくて、やわらかいものが蕾を上から下へと移動した。 「なんだ……? あっ!」  ピチャピチャと音がして謎の物体がアナルにしつこく触れてきた。気持ち悪いはずなのに、ゾクゾクと快感が走り、鳥肌が立つ。  熱い吐息が臀部に掛かって腰が揺れる。 「腫れてる。無理やり指を突っ込んだからだな」と男の声が下から聞こえて、ようやくアナルを舐められてることに気づく。 「駄目だ! 汚いから……」  慌てて男の手を外そうとしたら、逆にガッシリと下半身が動かないように手足で固定されてしまう。 「汚くなんてない。ちゃんときれいに洗ったんだから」  そうして、おれの中へ舌が侵入してきた。犬や猫が水を飲むように舐められ、出たり入ったりを繰り返す。 「う、あっ……ひ、やっ……」 「んっ……」  男の鼻があたり、彼の息が掛かるだけで、おれのものはふたたび兆し始めた。  鏡に映った自分は、いやらしい顔をして口を開き、唾液を垂らしていた。  ぶるぶる足が震え、「もう立っていられない」と嘆けば、身体を抱え上げられる。やわらかいバスタオルで髪や顔を拭かれ、そのまま大きなダブルベットへと寝かされた。  ベッドヘッドにあったローションパックを破いて指に纏わせ、とろっとした液体が、先ほどまで舐められていたところに触れて沈み込んだ。 「あっ……あ……んぅ……」  待ち望んでいたかのようにクプクプと男の骨ばった長い指を受け入れていく。 「気持ち悪くないか?」  不安そうにこちらをうかがってくる彼に「気持ちいい」と微笑む。「もう少し手前の内側のところが好きだから、そこをいっぱい指の腹で触ってくれ」 「どこだろう?」と困り顔をして男は、おっかなびっくりしながら指を動かした。

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