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第27話※
チルをそっとベッドに横たえ、ジークはその小さな身体を優しく覆い被さった。
「……チル、好きだ」
低く甘い声で囁きながら、ジークはチルの額に、瞼に、頬に、何度も何度もキスを落としていく。
「君は……こんなにも俺を夢中にさせる」
吐息を交えたその囁きに、チルの胸がぎゅっと締め付けられる。
ジークの手が、ゆっくりとチルの服をはだけさせ、素肌に触れる。腹から胸へ、なぞる指先は意地悪なほどに優しく、ゆっくりと、焦らすように這い上がった。
触れられるたび、びくりと身体が跳ねる。
その反応すら愛おしそうに、ジークはさらに優しく撫でる。
「……ジーク様……っ、あ、ぁ……っ」
かすれるような声が漏れるたび、ジークの金の瞳が細められる。
「もっと……聞かせてくれ」
甘い声で囁きながら、ジークはチルの小さな身体を抱きしめ、肌に唇を押し当てる。首筋、鎖骨、胸元へと、降りていくキスは甘く、そして時折、貪るように激しい。
舌先で胸の尖りをなぞり、ふっと熱い息を吹きかけると、チルの身体が震えた。
「……ん、っあ、ああ……っ」
無意識に漏れる甘い声に、ジークはたまらないというようにチルの胸を吸い上げる。優しく、時に強く、じわじわと深く、音を立てて。
「……や、ぁ……んっ……!」
全身が熱く、甘く蕩けていく。
誰にも教わらなかった快感が、ジークの手と口から、容赦なく流れ込んでくる。
どこを触れられても、ジークのものにされていく感覚。
唇が触れ合えば、息をすることさえ忘れそうになる。ジークの体温に包まれて、心の奥がじんわりと熱を持ち始める。
「……チル、離さない」
耳元に囁かれるその声が、身体の芯まで甘く震わせる。
チルはただ、ジークの名を何度も心の中で繰り返した。気づけば、すべてを委ねるようにその腕の中に溶け込んでいた。
愛されることが、こんなにも温かくて、苦しいほど幸せだなんて。そんなこと知らなかった。
バサ、と音がした。
ジークが自らの服を脱ぎ捨てた音だった。
目の前に現れた、鍛え上げられた裸身に、チルは無意識に息を飲む。精悍な胸板、引き締まった腰。男らしく逞しい肢体が、すべてチルだけに向けられている。
ジークはベッドに手をつき、チルを逃がす気などないとばかりに、その身体を覆った。
「チル……いいか?」
低く、耳に響く声。理性を必死に押しとどめながら、それでもチルを尊重しようとする、必死な声だった。
チルは、小さく、頷いた。
見上げるジークの瞳が、甘く溶けた。ジークは、ゆっくりと、愛する者を抱きしめるように、チルをその腕の中に閉じ込める。
チルの小さな頷きを受け取ったジークは、もう迷わなかった。そっと、慎重に、けれど隠しきれない情熱をもって、チルに口づける。
重なる唇。ゆっくりと、甘く、深く。
最初はそっと。けれど次第に、ジークの舌がチルの唇をなぞい、促すようにやさしく割っていく。チルも、ぎこちなく応えた。震える唇を開き、ジークを受け入れる。
熱い舌が絡み合い、吐息が混ざる。
「……チル……」
ジークは甘く囁きながら、チルの細い身体を包み込むように抱きしめた。
手のひらが、チルの背を、腰を、腿を、何度も撫でる。触れられるたびに、チルの肌は敏感に震え、次第に熱を帯びていった。
「大丈夫、全部俺がするから……怖がらなくていい」
低く甘い声で、ジークは何度も何度もチルに囁きかける。そのたびに、チルの胸の奥に小さな火が灯り、そして、静かに燃え広がっていく。
ジークの指が、そっと胸の頂をなぞる。
くすぐるような優しく、次第にゆっくりと円を描きながら、敏感な突端をやわらかく押し包むように撫でられる。
「……っ、あ……」
どこから漏れたのか、自分でもわからないほど艶を帯びた声が、喉の奥から零れた。
押し当てられた胸の尖りが、じんと痺れるように疼く。
その敏感な一点に、ジークが唇を落とす。吸い寄せるように深く口づけると、濡れた音が静かに響いた。
「……んっ、ああ…っ」
震えた吐息が止まらない。舌先がそこをゆっくりと転がるたび、意識が甘く揺らぐ。
音を立てるたびに、身体の奥から何かがとろけ出すようで、その感覚に、抗えなかった。
ジークの手が、さらに奥深くへと滑り込む。指先が優しくチルの太ももを撫で上げ、腰を抱き寄せる。身体を重ね、肌を擦り合わせ、ジークはチルの耳元に囁く。
「君を、全部、俺にくれ」
その言葉に、チルは小さく目を閉じた。
自分のものじゃないみたいに熱く疼く身体。胸の奥で跳ねる心臓の音。
こんなにも、この人を欲しいと思ってしまう。そして、求められることが、こんなにも嬉しいなんて。
ゆっくりと、ジークの指がチルの奥へと触れてくる。初めての感覚に、チルの身体はぴくりと跳ねた。
「っ……ジーク様…」
不安げに身を強張らせたチルを、ジークはすぐに強く抱きしめた。
「大丈夫……チル。嫌なことは絶対にしない。……だから、力を抜いて」
優しいキスを何度も落としながら、時間をかけてほぐしていく。ジークの指が音を立てて奥を掻き混ぜる間、チルは漏れる声を必死で抑えていた。
「……っ、んぁ、んっっ…」
「チル…声…堪えないでくれ」
声を抑えなければと思えば思うほど、喉の奥から甘い音がこぼれてしまう。恥ずかしさに唇を噛みしめようとすると、ジークがそっと囁いた。
「……我慢しなくていい。君の声が、もっと聞きたい」
低く、熱を帯びたその声に、胸の奥がぎゅっと疼いた。
「はぁぁっ…ああ…っんん…」
抑えていたものがほどけるように、次の瞬間にはまた甘い声が零れていた。
ジークの指が、名残を惜しむようにゆっくりと引き抜かれた。その直後、代わるように、別の熱がぬるりと押し当てられる。
先端が触れるだけで、身体がびくんと跳ねた。火照った奥に、さらに熱く、硬く、息が詰まるほどの存在感を持つものが触れている。
ジークの吐息が、すぐ近くで濡れた音を立てた。
「……準備は、できてるな」
その低い囁きに、全身が震えた。
チルはこくんと頷いた。
「…だ、だいじょうぶ…です…」
声はかすれ、熱のせいか震えていた。ジークの視線がすぐに降りてくる。優しく、けれど逃さない目だった。
「怖いか……やめようか?」
そう囁かれても、チルは、ほんの少しだけ目を伏せて、そして、首を横に振った。
「……やめないで…ほしい」
震える声で、けれど確かな意思を込めて、そう告げる。ジークの手がそっと伸びて、チルの髪を優しく撫でた。その指先は、励ますように、包み込むように、温かかった。
「……チル、君は、綺麗だ」
ジークの囁きは甘く、どこまでも優しかった。熱く滾るそれがゆっくりと深く、チルの奥に入ってくる。
「……っ、ぁ……!」
最初の瞬間、涙が滲みそうになるほど苦しくて、怖くて、でも、ジークはすぐにチルを抱きしめた。
「痛いか……?」
「……だ、だいじょうぶ……です」
声にならないくらい震えながらも、チルは必死にジークを受け入れようとする。
身体の中…奥深くまでジークが突き抜けていくようだ。それは硬く熱く波を打つ。
そんなチルを、ジークはさらに愛おしそうに抱きしめ、動きを止め、キスを重ねた。
甘く、優しく、何度も。
やがて、チルの震えが少しずつ溶けると、ジークはゆっくりと動き出した。
「……つらかったら、すぐ言えよ」
低く囁く声が、熱を帯びて耳をくすぐる。
肌が触れ合うたび、内側を擦られる感覚が押し寄せてくる。ふいに甘く疼く場所に、細やかな震えが広がった。
「……ぁ、あ、ジーク様……っ……」
名前を呼ぶ声が、涙まじりに震える。ジークはチルの頬にキスをしながら、囁く。
「大丈夫、チル……君はすごく、可愛い」
身体が擦れ合うたびに、チルの奥に甘い疼きが走る。
首筋に、熱を帯びたキスがいくつも落とされた。唇が触れるたび、じわりと甘い痺れが広がって、息が詰まりそうになる。
「……っ、はぁぁう、ジ…クさ…まっ」
「ああ…チル…こっち向いて…」
言葉と、触れ合いと、熱い愛で、チルを満たしていく。ジークは、チルの細い腰を抱き寄せ、丁寧に、愛おしむように、深く繋がっていく。
吐息と水音が混じる中、肌を重ねるたびにチルの背中も跳ねる。ジークが腰を大きく回した。
「はああっ…っ、っ、ああ、はっ、やぁ、」
静かな室内に、水音が艶めいて響く。
ジークの腰が深く押し込まれ、その動きは次第に激しさを増していく。
ついていくのがやっとで、チルの身体は揺さぶられ、声が漏れた。背中が仰け反るほどの快感が、波のように押し寄せてくる。
「ああ…チル…っ、くっ…はっ」
「……ジーク…さ、ま…ああんっ…!」
チルの身体はきゅっと跳ね、揺さぶられる。初めて知る快感に、戸惑いきれない甘さが混ざる。
「や、やあぁんっ、はああっ…っつ、」
自分の身体なのに、思い通りにならない。
触れるたび、擦れ合うたび、どこか深くが疼いて、声がこぼれた。
「チル……いく…ぞ…」
「……ジ……ク…さま…っっ、」
息が乱れ、背筋がたわむ。ジークの熱が、確かに自分の奥にあって、それが、こんなにも気持ちいいなんて知らなかった。
甘くかすれた声を零しながら、チルはただ彼を受け止めていた。
何度も、何度も、確かめるように。
ふたりの身体は、もうどこにも隙間などなかった。
お互いを欲しがって、求めあって、重なっていった。
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