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第31話※
夜の帳が落ちる頃、二人を乗せた馬車は静かに王宮へと戻ってきた。
遠ざかっていく小さな町の灯りを、馬車の中からチルはいつまでも名残惜しげに見送っていたが、その隣には、ずっと手を握ってくれていた人がいる。
「……楽しかったな」
囁くようにジークが言い、チルの手をぎゅっと握った。
「はい……本当に、夢みたいでした」
小さな声で答えると、ジークは笑い、頬にキスを落とす。
王宮の静けさが、いつもと違ってやわらかく感じられる。
部屋に戻ってからも、ふたりの手は自然に繋がれたまま離れなかった。
「チル、湯浴みは後にしよう。今は……」
そう言って、ジークはチルを抱き上げるようにベッドへと運んだ。
何度も繰り返したはずの動作なのに、胸が高鳴る。ジークの膝の上に座らされる形になり、頬が熱を帯びる。
「今は、甘やかしたい気分なんだ。君が可愛すぎてさ」
「……っ、ジーク様……」
襟元に触れる指先、額に触れる唇、静かに落ちる愛しい声。ジークのぬくもりが、優しさが、チルの胸いっぱいに染み渡っていく。
「……こうして、そばにいてくれるだけで、満たされるんだよ。チル」
それは、声というより溶けるような吐息だった。チルは黙ってその胸に頬を預けた。
「……ジーク…さ…」
名前を呼ぶ隙さえ与えずに、唇が重ねられる。ひとつ、またひとつ。触れるだけのキスから、少しずつ深く、甘く、熱を帯びていく。
「……ん、っ……」
息継ぎの合間に、ジークが低く囁く。
「……チル、好きだ。何度言っても足りないくらい、君に夢中だよ」
チルは恥ずかしさに身を縮めたが、ジークの腕がそれを許さなかった。逃がさない、と言わんばかりに、背中をしっかりと支えられている。
「君が笑ってくれるなら、何度でも手を繋ぐ。君が泣いたなら、二度と誰にも触れさせない。……俺だけの、チルでいてくれ」
「……ジーク様…好き…好きです」
チルはハッキリと気持ちを伝えた。震える唇をかすかに噛みしめながら。
胸の奥が熱くなり、まぶたの裏がじんわり滲んでいく。それでも、ジークの目をまっすぐに見つめて言った。
こんなにも誰かを好きになったのは、きっと初めてだった。大きな手に包まれて、心ごとあたたかくなっていく。鼓動は速く、でも不思議と安心していて、涙と笑みが同時にこぼれそうになる。
「本当に……チル…可愛いな。俺はもう君しか見てないよ。……寝ても覚めても、君のことばかり考えてるんだ。また今夜も…君が欲しくなってしまった」
チルは耳まで赤くなり、ぷるぷると首を振った。
「……っ、そんなと…こ…っ、ジーク様、ダメ…あっ!」
膝の上に座っていたはずなのに、いつの間にか、そっとベッドに背を預けさせられている。服は脱がされ、ふたりの素肌が擦れ合っている。
「君のここは…可愛い。もっと奥まで触れてもいいだろうか」
最近、自分がジークに身体中をキスされるのが好きだと気づいてしまった。
首筋から胸元にかけて、熱を帯びた唇が、何度も何度も愛おしげに行き来する。触れられるたび、肌が溶けそうになって、息がうまく吸えなくなる。
「ジ…ジーク様…っ、そこ…すき…」
恥じらいを滲ませながら、それでもチルは小さく伝えた。ジークに触れられるたび、くすぐったいほどに心が波打ち、もどかしいくらいに、気持ちが良くなってしまうのだと。
「……もっと君に夢中になってしまっても、許してくれる?」
低い声が、耳の奥まで染み込む。
キスを重ねるたびに、チルの体は緩み、彼の腕の中へと溶けていく。
「…好きです……ジーク様……気持ち…いい」
その小さな声に、ジークは目を細め、再びチルの唇をふさぐ。
「もっと言って。君のその声が、俺は何より好きなんだ」
「…んっ、はぁっ…んんっ」
焦るようなキスが何度も重ねられる。その合間に、ジークの指先がそっと背中へと滑り、後ろの奥のほうをくすぐるように優しく撫で始めた。
「チル…力を抜いていてくれるか?」
大きく硬いもの…熱くてどくどくと波打つそれが、チルのうしろに当てられた。
ジークの腰が、ゆっくりと深く押し進められていく。その動きに合わせて、チルの身体がわずかに揺れた。
毎晩、可愛がられている…その熱く滾るものを受け入れている。だからなのか、身体の中心から疼く何かが湧き上がってくるのをチルは感じていた。
「ジ、ジーク様…っ……」
「苦しいか?」
ジークはチルの声に躊躇い、腰を引き抜こうとした。
「だ、大丈夫…奥まで…きて…欲しい…」
恥ずかしさは拭えないのに、胸の奥から込み上げる熱に抗えず、つい言葉が漏れてしまう。
「チル…君は…」
ジークの腰が深く沈み込むたび、湿った音が密やかに重なり、ふたりだけの世界に静かに広がっていく。
「はぁっ…は、ああ、んんっ」
どくんどくんと重く波を打つ大きなそれは、チルの奥深くまで届く。ぴったりと隙間がないほどに埋め込まれている。
「…大丈夫か?」
「だ、大丈夫…ジーク様……っ、あの…」
「ん?どうした…苦しいか?」
「ち、違う…お願い…」
「痛いのか?」
「ゃ…っ、して……ん、、もっと、擦って、
いっぱい……ください、、」
どくんどくんと波打つもので、そこの奥深くを激しく擦られたいと願ってしまった。
「チル…っ、苦しかったら言ってくれ…!」
足を大きく広げられ、ジークは腰を激しく打ち込んでくる。揺さぶられるチルはジークにしがみついていた。
「……っ、気持ちいい…っ、ぁ…きもちい」
「君は…もう…優しくしたいのに…」
ジークはそう言ったけれど、その言葉とは裏腹に、動きはどこか必死で、優しさだけでは済まない熱が込められていた。
「はぁぁっ、そこ…っ、じくじくしたら…ダメっ…なんです…っ、はああんっ」
「じくじくって…ここが好きだろ?違うか?」
腰を左右に大きく振りながらジークはチルに問いかける。肌と肌がぶつかる湿った音がしている。
「違う…っ、やぁっ、好き…っ。すきぃ…」
ジークの大きなものが出たり入ったりして、擦られると、ビクッと身体が反応するところがある。ジークはわかって、そこばかりを狙ってくるようだ。
そこを硬くて熱いもので擦られると気持ちがいい。ひどく激しく擦られると、快感が強くて、ジークの身体をギュッと強く抱きしめてしまう。
「…っ、、くっ、チル…いくぞ」
「…っ、や、やぁ…っ、」
ジークは大きく二、三回腰を振ると、奥深くまで腰を押し付けた。どくどくと音を立てるように注ぎ込まれる。中からその熱が溢れてきて、外にだらだらと流れ出ていくのがわかる。
硬く滾るそれはチルの中で熱く蠢く。どくどくと流れ出す白濁の中でまだ硬く熱い。
腰をもう一度奥まで押し付けられると、ずくんと奥深くに快感が走った。
「ジーク様……」
チルはそっと両手を伸ばし、ジークの背中にまわす。ぎゅ、と優しく抱きしめるその腕は細くても、ぬくもりはしっかりと伝わっていた。
「…チル、大丈夫か?」
耳元で囁く声に、ピクッとチルの身体が反応する。
「だ、大丈夫です…」
ぎゅっとジークを抱きしめると、ジークは目を伏せ、ふっと息をついた。
「……でも、君に抱きしめられてるのは、幸せだな」
そう言って、ジークは自分の額をチルの肩にそっと預けた。チルの指が背中をさするたび、ジークの呼吸は少しずつ落ち着いていく。
ジークが腰を引こうとしたその瞬間、チルは思わず手を伸ばし抱きしめ、かすかに震える声で呼び止めた。
「ま、まだ…いかないで…っ…」
「…チル?」
「ジーク様…っ、もう少しこのままで…いて欲しいです…」
チルの言葉で、中に入っているそれは、ずくんとまた大きく重さを持つようになった。
「…ひゃっ…」
「そんなことを言うと…またこうなるだろ?優しくしようと…してるんだが…」
「だ、だ、だって…」
「だって?」
またジークが、確かめるようにそれをゆっくりと抜き差しする。そして、奥まで腰を進めてくる。熱の塊が内側に届くたび、胸の奥まで甘く痺れていくようだった。
「…んんっ…きもち…いい…から…」
素直な気持ちがするりと口から出た。
「…っ!もう…辛かったら言ってくれよ?」
再び、ジークがチルの足を抱え直した。そして深く浅く腰を打ちつけてくる。熱く滾るものが奥の奥まで満ちていき、チルは思わず息を詰めた。
「…ジーク様…好き…すきぃ…」
「ああ…チル…愛してるよ…」
二人の間を包む空気は、甘く、静かに、溶け合うようにやさしかった。
夜に響くのは、甘やかな囁きと、深く交わるふたりの吐息だけだった。
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