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第35話【番外編ジーク2※】
「……飲み過ぎたか?」
さりげなく問いかけてみる。
気遣うふりをしながらも、この後の展開はわかっている。
果実酒に少しだけ蜂蜜を加えると、チルは目を細めて嬉しそうに飲んでくれる。その様子が愛おしくて、つい毎晩、準備してしまう。
翌朝には、恥ずかしがって「もう飲みません!」と言うのも知っている。けれど、言葉とは裏腹に、差し出せば必ず受け取ってくれる。そんなところも可愛くてたまらない。
「……だいじょうぶですよ、ふふ。甘くて、美味しいです」
チルがそう呟いて笑う。頬がほんのり紅く染まっているのだろう。声もわずかにとろけていた。
「水も飲まないと、後で辛くなるぞ」
ジークは自然な仕草で水を渡し、ベッドへチルを導く。その背をそっと支えながら、満足げに息をついた。
今日も、ちゃんと可愛く酔ってくれている。
「……ふぅ、暑いですね」
そう呟いたチルの声が、ほんの少しだけ蕩けている。
「そうだな、暑いな。少し脱ぐと楽になる。……ほら、腕、上げてごらん」
言葉の途中で、すでに手が動いていた。チルが戸惑いながらもおとなしく従うのがわかっていて、つい微笑んでしまう。
スルスルと服を脱がせていく。さらけ出された肌が、じんわりと火照っていて、触れると、ピクリと反応が返ってくる。
「ジーク様の肌は……ふふふ……もっと熱いです。ほら、こんなに……」
照れてはいるが、チルは裸のままぎゅっと抱きついてくる。声の端には甘えた色が混じる。
「少し……熱を冷まそうか。おいで、俺の上に座ってごらん」
「えぇっ、だ、だめですよ……また…そんなこと、恐れ多いから…ダメです」
そう言いながらも、すでに身体はこっちに預けてきている。抵抗しているようで、どこか甘えた目だ。
「大丈夫だって。膝の上だ。な? ……この方が、いっぱいキスできるだろ?」
そう囁いて、頬に、額に、まぶたに、唇にと、ゆっくり、優しく、何度もキスを落とす。
「ふ、ふぁ……あ、っ……」
甘い吐息がこぼれるたびに、ジークの喉奥が微かに鳴る。頬を熱くしたまま、チルは恥ずかしそうにジークを見上げた。
「……キス、好きか?」
そっと問えば、チルは一瞬だけまばたきをしてから、こくんと頷く。
「……はい」
その素直な返事に、ジークの胸がずきりと鳴った。たまらないほど可愛くて、すぐにでも押し倒してしまいたくなる気持ちを、どうにか理性で押し留める。
「ふふ……ジーク様の心臓の音が聞こえますよ」
チルがそう言って、胸元に顔を寄せてくる。可愛くってどうにかなりそうだ。
「……君が触れてくるから、ドキドキする」
耳元で囁くように言えば、チルはさらに真っ赤になって小さくうずくまった。
ジークはその姿をそっと腕に抱き込み、背中を優しく撫でた。
そのまま、ジークはチルの細い腰をそっと撫ではじめた。指先は迷いなく、けれど焦らすようにゆっくりと滑っていく。
滑らかな肌を辿りながら、やがて指は背中を伝い、慎重に、まるで確かめるように、チルの後ろへと添えられていく。
指先は、じわりと熱を帯びながら、チルの奥へと忍び込んでいく。敏感なところに触れた瞬間、チルの身体が小さく跳ねた。
「…はっ、やぁぁ…」
小さな声で抵抗される。
今朝、少し無理をさせた名残を感じさせるそこは、ひくひくと誘うように動いていた。
「……チル、少しだけ、いいか?」
「…はい…」
嫌がられないのをいいことに、先に進めてしまう。チルはこの体勢からどうしたらいいかわからないようである。
「このまま…入れてもいい?俺につかまってて」
答えを聞く前に、腰を少し持ち上げ、ひくひくと誘うそこに、熱く、硬くなり過ぎたそれを当てる。下から上へと押し当てると、じゅっくと、音を立てて入っていく。
「…は、はぁぁっ…んん…」
「ゆっくり…座って。ほら、大丈夫だから」
「…ジ、ジーク…様…や、や、、あ」
「ダメ?このままだと辛いか?」
「ち、違う…き、き…気持ち…いい」
果実酒のせいだろうか。
いつもより素直に、そして少しだけ大胆に、チルが想いを口にしてくれる。その声を、もっと聞いていたくなる。
「チル?どこがいいか教えてくれ」
「ん…っ、わ、わかん…」
「ここか?どうすればいい?」
少し意地悪な質問だとわかっているが、答えるまで執拗に聞いてしまう。
ここがいいのかと、腰を回し、下から上に突き上げる。硬くなったものでチルの奥の壁を何度も叩きつける。
引き抜き、叩きつけるとチルは気持ちよさそうな声を上げてくれる。
「チル…教えて。これは嫌い?強いのはダメか?」
「つよ…い?」
「そう、こんな感じにするのは?」
更に腰を下から突き上げる。チルの柔らかな尻を両手で掴む。少しひんやりとした尻の感触が気持ちよく、掴む手の力が強くなってしまう。
「…はぁ、あああんっ、つ、つよい…」
「…っ、くっ…ダメか?」
ダメと言われても腰の動きが止まらない。チルが必死にしがみつくのがわかる。
「やぁぁ……っ、すきぃ、つ…よいの…すき」
チルの言葉を聞き、一瞬動きが止まってしまった。やはり…果実酒のせいだろう。こんなに素直になるチルを見るのは初めてである。
「じゃあ……次は、こっち。優しくするけど、君が可愛すぎたら……どうかな」
チルをそっと抱えたまま、ゆっくりとベッドに押し倒す。優しくすると言いながら、堪えられない自分に、小さく苦笑した。
「チル…もっと教えてくれ…君の気持ちがいい場所を知りたい…」
「……ん、ん…はぁ、わか…んない」
しつこいくらいに聞いてしまう。だけど、こんなにも愛おしいのだから、仕方がない。明日、恥ずかしがって目を合わせてくれない君の姿も、ちゃんと想像がつく。
「……明日、怒らないでくれよ?俺は君が可愛すぎて、止まらなそうだ」
ジークにとって、静かで甘やかな夜が、始まった。
end
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