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【7話:気づかないふりをして、少しずつ】
生徒 なんか、レオン様変わったよね
生徒 分かる!前も気だるい感じが良かったけど、最近はなんか楽しそう
生徒 やっぱり、望月が番だったんじゃない?
生徒 うそー!私が番になりたかったー
生徒 あんたベータじゃん、そもそもアルファの番になんてなれないって
生徒 来世はオメガになりたーい。あはは!
ふざけあった後の笑い声と遠慮の無い会話が、ハルトの耳にも入ってくる。
ハルト (ならバース代わってくれよ、ったく)
意識を遠くから、近くにいるレオンと佐藤と田中に戻す。
相変わらずレオンは隣の席にいるし、何かと着いてくるのは同じだ。しかし、診療所に一緒に向かった日から、話すことに関しては嫌な気持ちにはならなくなっていた。
田中 朝倉って、出来ないことあんの?
レオン …ハルトには、会話ができてないと言われた
佐藤 ひでぇ(笑) でも今は、話せてるじゃん
ハルト お前らと話して学習中なんだろ
レオン …そうだな。気軽に話せる友人は居なかったから
田中 孤高のキングだったのか、かわいそうに〜
レオン …今のは、揶揄われてるな?分かるぞ
ハルト 朝倉、こう言う時は、怒って良いぞ
田中 アルファのマジギレとか、やばそうだな。ごめん、朝倉、悪気はないからな?
レオン 悪気がないなら、いい。許す
すっかり佐藤たちとも馴染んでいる。今やレオンはハルトにとって、仲良しグループの1人、ただしアルファで番。そんな、微妙な立ち位置だ。時々フェロモンが少し気にはなるが、レオンもベータの佐藤や田中と同じように自分に接してくれている。
ハルト (悪いやつじゃないんだよな)
知識は豊富なのに、世間知らず。勉強は教えられるのに、自分のこととなるとどこか抜けている。ハルトは、年の離れた兄弟が、言いたいことをうまく伝えられない様子に似ているなと思った。
そう見えてしまうと、友人としてどこか放ってはおけない。
ハルト (友達、でいいだろ)
ハルトは自分にそう言い聞かせる。たまに胸がどきんと高鳴るのは、フェロモンのせいだ。きっとそうだ。オメガ扱いするなと言った日から、そういった言動を取らなくなったレオンを見直したことも、友達、だから。
きゅっと、一度唇を固く結ぶ。
アルファだからとかオメガだからとかナシで。このまま、卒業まで何事もなく平和に過ごせれば、それで。
何もなく時間が進めば良いと、思っていた。でも世界には、アルファとオメガがいるんだ。
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