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第2話
東城のマンションに帰り、おかげで助かったと思いながら青い傘を傘たてにさし、広瀬は部屋に入った。
東城は今日はまだ帰ってきていない。突然の雨だけど傘をもっているのだろうか、と思いながら夕食を食べていたら、帰ってきた。
「あの傘なんだ?花沢ふとん店。サザエさん?」そういいながらダイニングに入ってくる。
東城が見慣れない傘を玄関先で広げたのだろう。
サザエさんの花沢さんは不動産屋ですよ、とは言わなかった。かわりに帰り道に貸して貰ったと告げた。
「へえ。親切な人もいるもんだな」
東城はぬれていない。
「傘もってたんですか?」
「いや、降ってたからタクシーで帰ってきた」
「この近距離を?」
「距離なんて関係ないだろう。雨降ってんだから」と言い返された。
「コンビニで買うとか」
「ビニ傘をか?あれ、好きじゃないんだよ」
「好き嫌いがあるような商品とは思いませんでした」
「だろうな」と東城は言う。「で、花沢ふとん店ってどこにあるんだ?」
広瀬が店の場所の説明をすると「ああ」とうなずいた。「そういえば、あの辺りさびれた小さい商店街みたいなのがあるな。お前あっちの道通ってたのか」
「今度、返しに行きます」と広瀬は言った。
あんな大きな字で店の名前書かれた傘じゃ借りパクもしにくいからな、と東城がからかうように笑っていた。だが、その夜、浴室乾燥機をかけて傘を乾かしてくれていた。
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