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第6話

パーティが終わる頃奇妙な出来事があった。 武中が財布がない、と言いだしたのだ。上着の内ポケットに確かに入れていたのだ、という。 クロークに預けていたカバンにも入っていなかった。それほど慌てた感じもなく、武中は会場の係りに財布がないことを伝えていた。 しばらくして、財布がみつかったと会場の支配人が持って現れた。尻のポケットには入らない黒いブランド物の長財布だ。武中は財布を受け取ると、中を見た。 支配人は彼の前でじっと待っていた。 「現金がない」と武中がいいながら財布の中を支配人にみせた。札をいれるところが空だ。 カード類は刺さっている。 支配人は神妙な顔をしている。「警察に届けますか?」 「いや、いい」と武中は答えた。「たいしては入ってなかった。現金は持ち歩かないんだ。カードが無事でよかった。警察に言ったって、どうせ捕まらない」 支配人は困った顔をしていた。何回か、どうしますか?と聞いていた。 だが、武中は財布を内ポケットに入れると、気にしなくていい、帰るといってその場を去っていった。

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