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第11話
荒い息をついていると髪をなでられた。見ると、東城は優しそうな穏やか顔をしている。
まだ、涙で視界がぼんやりしていて、自分ばかりが快感に溺れていたような気分になる。恥ずかしくてちょっといやだ。
不満を感じ取ったのだろうか、抱き寄せられた。
「なに?まだ足りない?まだしたい?」
「それは全くないです」かすれた声でそう答えたら喉の奥をならして笑った。
「そうだよな。もっとって言われたら、体力あるなあって思うよ。それか、よっぽど欲求不満だったのか、とか。まあ、何日もしてなかったから」
あなたは足りたのか?とは聞けなかった。足りないけど、広瀬が無理そうだからいい、とか、正直に言われたくはない。
ふと頭に浮かんだことを言葉にしてみた。
「今度」
「なに?」
「してるところ見せてください」
「なにを?」
「東城さんが自分で、してるところを」
沈黙が流れた。この相手が本当にびっくりしている顔を見るのは久々だった。
「さっき『なんでも』するって。でも、嫌なら」
「ああ」東城はうなずいた。「ああ、言ったし、いいぜ。全然、かまわない。今、見たい?」
「今はいいです。もう寝るから」
「あ、そう」
広瀬は掛け布団を引き寄せてもぐった。東城が手を伸ばして整えてくれる。
「お前って、相変わらず、謎だ」と彼は言った。
そう言いながら、彼は、また髪をなでた。広瀬が眠りに落ちるまで。そうすることが当たり前のように。
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