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第22話

地下鉄の駅を降りて15分くらい歩いたら協議会の入っているビルがあった。北の方の区の住宅地とオフィス街の間くらいだ。 「ここ、北池署管内?」と宮田は広瀬に聞いた。 広瀬はうなずいた。広瀬が大井戸署に異動になる前にいた署だ。 「じゃあ、この辺りのことは詳しいんだな」 広瀬はタブレットの画面で地図を示した。広瀬が作っていた、この付近の地図だ。宮田は広瀬の記録した付近の事件を見る。 「あんまりいい地域じゃないんだな」と宮田は感想を述べた。 協議会は小さいビルに入っていた。古いが汚くはないビルだ、広瀬は写真を撮っている。ポストをみるとちゃんと協議会名が入っている。中身はない。1階をくまなくみると、管理会社の名称があった。広瀬はそれも写真に撮る。 1、2階には飲食店と足つぼマッサージ店が入っている。どちらもまだやっていた。飲食店には数人が入っていて食事をしているのが外のガラスからもわかる。足つぼマッサージはよくあるチェーン店のような雰囲気だ。 それらを確認してから、内階段を上がった。協議会は3階だ。エレベータもあるが、階段を使った。 鉄の重そうなドアがあった。プラスチックに黒く彫られている表示もでている。 「わりと普通だな」と宮田が感想を述べた。辺りを見回すが、監視カメラのたぐいはなかった。 ドアノブにそっと手をかけて動かしてみたが、開かなかった。この時間だ。もう、みんな帰ったのだろう。 ドアがあるだけなので特に手がかりになるようなものは無い。上の階にも行ってみたが、そこも閉まっていた。4階は建築士の事務所のようだった。入っているテナントは名称だけ見ると普通だ。特にあやしい事務所はない。 分かる範囲の情報は全部集めて、広瀬と宮田は3階に戻った。 帰ろうかと思っていたときに、エレベータがポンという合図音をたてて開いた。 協議会の関係者が来たのかと、わずかに身構えた。降りてきたのはスーツ姿の青年だった。身だしなみがよく、髪を後ろになであげている。宮田よりやや背が高いくらいだ。 降りてきた男も、二人を見て身構えた。 宮田は階段を降りて逃げようかと思ったが、広瀬が口をひらいた。「こちらの事務所の方ですか?」普通のトーンの平板な声だ。 男は否定した。「違います。あなた方は?」 「ちょっと、ここの人に用事があって」と広瀬は答えた。「閉まっているようですが」 「そうですか」と男は言った。そして、しばらく迷っていたようだが口を開いた。「もしかして、ですが、ハピハピストラテジー&ソリューション協議会のセミナーの参加者の方ですか?」と男は聞いてきた。「そのう、被害者の方ですか?」 広瀬と宮田は顔を見合わせた。そして、宮田が男に言った。 「ここではなんですから、場所を変えましょうか」

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