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第23話

3人で駅前のファミリーレストランに入った。他に客は入っているが、混みあっているほどではない。 水とコーヒーを頼んで、来る間に男が先に名刺を出してきた。千鳥法律事務所、弁護士、千鳥祐と書かれていた。 「弁護士さん」と宮田は名刺をしげしげとみて言った。宮田と広瀬は名前は名乗ったが、職業は告げなかった。「弁護士さん、こんな遅くまで仕事されているんですか」 「被害者の弁護士ですか?」と広瀬は聞いた。 千鳥はうなずいた。「そうです。ご存知かもしれませんが、先ほどの協議会は自己啓発セミナーを主催しています。そこで、高額なセミナーに参加している人がいます。投資関係の話もあり、かなり大きな金銭が動いているようです。私のクライアントはセミナー参加者の親族です」 「それで、協議会に?」 「ええ。さっきまで、この近くでクライアントと話をしていたんです。近かったので、実際の事務所を見に来たんです。そうしたら、あなた方がいた。あなた方は、セミナーの参加者ですか?」 「いえ。知り合いが参加していて、のめりこんでるって話だったので、どんなんかなと心配になって見に来たんですよ」と宮田が言った。 「裁判になるんですか?」と広瀬は聞いた。 「まだ、なんとも。どんな形でどの程度お金が支払われたのか、はっきりしていないんです。相談されているのはあくまでも親族の方です。それに、この手の事件では裁判で訴えてもお金がもどってくるということは難しいです。なんらかの不法行為があったと証明するのも困難ですし、証明できたとしても、金はすで主催者の手元にないケースが大半です。戻ってくるお金はほとんどありません」 「でも、裁判になれば、他の被害者がでるのを防げますよね」と宮田が言った。 千鳥の表情は固い。「あなた方のお知り合いはもうかなりお金を払っているんですか?」 「そうです。周りも心配して止めさせようとしているんですが、聞かないんです。投資詐欺だとかそういう証拠があれば、本人も納得すると思うんですが」宮田はそう言い、当たり障りのない範囲で、千鳥に今までのことを説明した。 「状況は私のクライアントと同じですね。でも、同じような悩みの方がいてよかった」と千鳥は言った。「できれば、継続して情報交換したいです。こちらも、わかったことがあればお話しします」 「わかりました。ご連絡しますよ」と宮田は言った。 駅前で千鳥とはわかれた。千鳥はいつでも電話をください、と言って去っていった。

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