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第24話

東城のマンションに帰りついたのはかなり遅い時間だった。 東城はベッドで既に横たわっていた。間接照明をつけ、目を閉じている。眠っているのかと思い、静かにベッドに入ったら、手が伸びてきた。 広瀬を背中から抱き寄せ、シャツの中に手をすべりこませる。自分の腹筋が反応してひくっと動くのがわかる。相手は眠る寸前だったのだろう、腹を胸をなでる手が指先までぼうっと熱い。 「おかえり。どうだった?」と聞かれた。 今日、協議会の事務所に行く話は伝えていたのだ。 広瀬は、協議会の入っているビルの様子を話した。以前いた北池署管内なので、周辺地域の様子もわかる。 東城の手がいつものように自分の身体をゆっくりとなでている。広瀬を感じさせようとするというよりも、愛おしがられている感じだ。すべすべしてて肌触りがいいから、手が気持ちいいんだ、と以前いわれたことがある。 寝巻き代わりに着ているイージーパンツのゴムに手がかかってきたので、それはやんわりと押しのけた。すると、強く侵入はせず、また、上半身に手がもどっていく。 「ビルの管理会社に協議会の様子をそれとなく聞いてみる予定です。時間があれば、店舗にも」 「お前、仕事でもないのに、熱心だな」と東城が言った。 「被害者がいるかもしれないので」と広瀬は答え、千鳥弁護士に会った話をした。 「弁護士?」 「はい。協議会の前で会いました。被害者の親族がクライアントで、相談を受けているところだということでした」 「どんな奴だった?」 「若手の誠実そうな人でした。静かに話をする人でした」 「事務所のWebページはあったのか?」 「はい」千鳥弁護士と別れた後、調べたのだ。「離婚や相続の案件をメインで扱っているようです。自己啓発セミナーや宗教関連のトラブル相談も受けています。派手には活動していないようですが、ネットの評判などをみると、きちんと対応するいい弁護士のようです。今日も遅くまで被害者の相談にのっていたようです。協議会の事務所まで来て自分で調べようとするあたりも好感がもてます」 「ふうん」と東城は言った。「なるほどなあ。弁護士か」 「今日の話は、今度、鈴野や花沢さんにも話して、今後どうするのか相談します。千鳥弁護士に接触するのかも含めて」 「そうか。その会合の日時決まったら俺にも教えて。参加したいから」 広瀬はうなずいた。 「それと、気になることがあるんだ」と東城が言う。「今度、付き合ってくれる?」 「どこに?」 「詩吟の先生のところ」と東城は言った。 「詩吟習うんですか?」 「そうじゃないよ」と東城は軽く笑った。「ついてきたらわかるよ」 それから、東城の手はしばらく広瀬の肌の上を優しく動いた。彼の唇が自分の首の後ろにつく。だが、時間がたつに従い、時々、手が動かなくなった。 東城は眠いのだろう。広瀬は、彼の手をとり、自分の向きをかえた。 「どうした?」と眠りの中から少しだけ引き返してきた東城の声がする。 広瀬は、彼の頭を胸に抱きこんだ。自分の手を彼の背中に回し、子供を寝かしつけるようにとんとんと軽くたたく。 彼はすぐに眠ってしまった。抱きしめた身体が温かい。今度は広瀬がその感触を楽しんだ。

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