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第28話

頬に、唇に、耳になんども軽く落とされていたキスがふととまった。相手はじっと動かないでいる。広瀬は不思議に思って目をあけた。 視線の先にいた彼は、欲をたたえた獰猛な目をしていた。このまま食べられてしまいそうだと思った。 目が合ったとたんに、両手首をとられてシーツに縫い付けられ、上からのしかかってきた。息が詰まったのは重さのせいだ。感じているためではないはずだ。 今度は、噛み付くように強く深いキスをされた。自分の弱いところを彼はよくしっている。上あごをこすられ、舌を吸われる。そうされていくうちに、すっかりと身体中に熱がまわった。 「あ」 唇が突然はなされて、声があがってしまう。追いかけそうになったのを我慢した。 東城は傲慢な笑みをうかべている。 「キスしただけなのに溶けそうな顔してる」と彼は言った。「目元が赤くて、潤んでて、お前、すごいエロいよ。こんな表情するの、俺以外誰も知らないんだな」 広瀬は急に恥ずかしくなる。 こんなことを言葉にわざわざ出して指摘するなんて無神経だ。頬を固くしたのがわかったのだろう、東城はなだめるようにそっとなでてきた。 「うれしいんだ。俺にだけ見せてくれて、俺にだけ感じてくれてる」 シャツの上から右手がそっと胸をたどり、下にのばされる。服に入り込んできて、広瀬の中心にためらいなく触れてきた。さっきのキスで固くなっている。 「ああ。ここも、感じてくれてる」 ゆっくりとなで上げられたそれは、さらに立ち上がっていった。 彼の手の中で自分が濡れていくのがわかる。シャツは着たままで、下を下着ごと脱がされた。 「もう、こんなになって」とじっくりと眺めて東城は言った。「顔、そらすなよ。恥ずかしいことじゃない」と言われた。「もっと、気持ちよくしてやるからさ」 そういいながら、ベッドサイドの引き出しをあけて、ジェルをとりだした。「このホットジェル、好きだろ」 少しの量をたらされるだけで、じんわりと熱が広がる。東城は丁寧にジェルを広げ、広瀬の性器を手のひらで包むとしごいた。 「こうされるのも、好きだろ」と言う。 声と息がもれる。熱くピリピリした感触が波のようにおこり、指先まで広がってくる。気持ちがいい。でも、足りない。 広瀬は手を伸ばして東城のスウェットの下にふれた。彼が遮らなかったので、手を差し入れる。 そして、自分以上に猛っているそれを下着の上からなでた。ローライズボクサーなので、すこし下にずらすと先端が飛び出してきた。指先でそれをなでた。 「触る?」と聞かれた。 「ん、」 うなずくと、広瀬が両手で触れるように身体の位置を動かしてきた。もどかしくなって急いでスウェットを脱がせる。それから、下着もおろした。かさのある東城の性器を握った。なんどか、手を上下させると、すぐに先走りをこぼした。 「それ、すごくいい」と彼が言った。彼の表情だって、十分にエロい。 東城は、広瀬の手ごと二人の屹立を重ねて握りこんだ。彼の固いごつごつした性器が自分のにあたる。ホットジェルと愛液が入り混じって、すぐにどろどろになる。なんども擦りながら東城が広瀬の胸に顔をうずめ、シャツ越しに舐めてきた。 「気持ちいいから、ずっと、このままでいたい。すぐにいくのもったいない。でも、いきたい、」と東城がくぐもった声で言った。 言葉通りじっくりと楽しんでいるのだろう。緩急をつけて何度も行き来させている。はっと彼も荒い息をしていた。 親指で先端をなでられ、指先がやさしく広瀬の好きなところをくじってきた。広瀬は軽く声をあげた。 耐えられなくなってきたら、なんどか強く擦りあげられた。同時に精をはなった。その瞬間、広瀬は目を閉じてしまった。彼のいく顔がみたかったのに。 しばらくして目をあけたら、彼も目をとじていた。少しして目をあける。にやっと笑った。 「お前の一番エロい顔、記憶した。今度、独りの時間が長かったら、思い出してネタに使う」 広瀬のいく顔をみて、忘れないようにすぐに目を閉じたのだという。 「変態っぽいから、やめてください」 「正常だと思うけど?恋人のいき顔思い出してすんのって」そういうの嫌がるお前の方こそ、変なこと想像しすぎてるんじゃないのか、と彼は言った。 広瀬は、手を伸ばして部屋を暗くした。 「俺より、お前の方がいやらしいんだよ。頭も身体も」と東城は手探りでティッシュをとりながらしつこく言っていた。

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