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第34話

その後、鈴野から、愛海さんと一緒に千鳥弁護士に話を聞きに行き、被害者の親族にも紹介されたという報告が宮田たちにあがってきた。 愛海さんを首尾よく食事に誘うことができたかどうかは、明らかにはされなかった。話さないということは上手くいっているのだ、と宮田は判断した。 千鳥弁護士の顧客は、協議会を訴えることも視野に入れているらしい、ということがわかった。困難ではありそうだが、他にも被害者がいることは確実そうだった。 また、セミナーで集めた金が暴力団の資金源になっている可能性もある。そうだとすると、別に動きようがある、と千鳥弁護士は言っているらしかった。 一週間ほどたった後、東城が大井戸署にいくから会おうと、3人に連絡してきた。彼は手際よく小さめの打ち合わせ室を予約している。ついこの前まで通っていたのだから、勝手知ったるということなのだろう。 東城が3人に話をした。 「思ったとおり、武中は偽名だった。本名は、浜岡真。10年前に投資詐欺で逮捕されて執行猶予がついている。その際、立件できなかった詐欺がもっとあるらしいんだが、証拠もなにもでなかったんだ。今回の投資セミナーと手法は似ている」 「今回は詐欺を証明できるんですか?」と鈴野が聞いている。 「それは、未だこれからだ。浜岡の仲間は、10年前、逮捕されなかった。実は、同じようなセミナーの被害が数年前からポツポツあっんだが、なかなか組織が特定できなくて、可能性の一つとして2課が浜岡を探してたんだ。偽名を使っているとは思ったんだが、こんな身近で手広く商売していたとは思わなかったらしい。黙打会系が関係しているとなると、本庁のほかの部署も興味を示す可能性がある」と東城が言った。 「これから、どうするんですか?」 「鈴野たちが問題なければ、今まで集めた情報を2課に渡しす。2課の知り合いからは、正式な捜査にするといわれている。そのかわり、この件は2課に移って、お前たちは関与できなくなる」 鈴野と宮田は顔を見合わせている。 鈴野はうなずいた。「そうしてもらってかまいません。事件化するほうがいいでしょう。警察が動いたってわかれば、愛海さんも安心するし、真由さんにも注意しやすくなる」 「場合によっては、その彼女たちに協力を求めることになるかもしれない」と東城は言った。 「伝えておきます」 「花沢さんには?」と宮田が言った。「連絡したほうがいいですよね?」 「それは、俺が今日、夜に寄って伝える」と東城は言った。

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