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第37話

東城は更に話を続ける。 「お華の先生と3人のお弟子さんたちは、花沢さんとはどんな関係ですか?」 この質問には花沢さんは素直に答えた。「インターネットで知り合ったんだ。便利だねえ、インターネットって。今まで全く知らなかった人たちと出会えて、交流できる」 「彼女たちも、浜岡の被害者ですか?」 「被害者の家族や親戚なんだよ」と花沢さんが答えた。「全財産失って借金しょっちゃった人もいるし、騙されたってショックで病気になって亡くなっちゃった人もいる。インターネットで、詐欺の被害者が集まって情報交換しているところがあるんだよ。慰めあうっていうのが主な目的。それ以上のことはほとんどなにもないんだけどね」 そんな交流をしていたときに、浜岡が別な名前、別な組織を名乗って、前からの仲間たちと同じようなセミナーを開いていることがわかったのだ。おそらく被害がでているだろう。だけど、また、立証して罰することはできないのだろう。 ネットで知り合った仲間とは実際に会って話をすることもあった。 そして、今回のことを思いついたのだ。全部を最初から仕組んでいたわけではないが、広瀬たちが、浜岡のセミナーに気づき、調べてもらうためにいろいろと工夫をしてみたのだ。 「花沢さんも、浜岡の被害者だったんですか?」広瀬は聞いた。「被害者のご家族ですか?」 花沢さんは首を横に振った。 「被害者の知り合いなだけだよ。幼馴染にヨシオっていうのがいてね。この近所に住んでたんだけど、10年前に長年働いてた会社を早期退職したんだよ。早い話、リストラされちゃったんだけどね。その時は落ち込んでて、がっくりしてたよ。長いこと働いて会社に愛着もあったしね。でも、しばらくしたら気を取り直してさ、割り増し退職金もらったんだし、子供も独立したんだから、再就職先はのんびり探すとして、奥さんと二人で、ずっと行きたかったスペイン旅行しようかっていうような話をしてた。でも、その奥さんがさ、浜岡のやってるセミナーにひっかかっちゃたんだよ」と花沢さんは言った。「セミナーの上位クラスとかいうのにいくのにもお金すごくかかるし、いい投資があるからって勧誘されちゃってね、気がついたら、借金もいっぱいになってたらしい。退職金当てても返せなくて、家も売ってね。奥さん、かわいそうだったよ。ヨシオもさ、長年汗水たらして働いてて、やっとのんびりってときに、そんなんになっちゃって」 「10年前ですと、浜岡が逮捕されたときですか?」と東城が聞く。 「そうだよ。逮捕されたけど、お金もちろん戻ってこないし、被害金額は実際よりも少ない金額しか証明できなくて、執行猶予がついちゃっただろ。おまけに、あいつの仲間は逮捕も何もされなかった」 花沢さんはビールを片手に深いため息をついた。「みんなさ、投資詐欺なんて騙されたやつが悪いっていうけど、どうなんだろうねえ。欲かいた人間が騙されるっていうけどさあ。ヨシオの奥さん、そういう人じゃなかったんだよ。だいたい、最初から儲け話で騙しに来てるってわかってれば、だれも騙されやしないよ。東城クンもセミナー聞いただろ。あんな風に楽しそうな会で、ずんずん引き込まれていったら、わからないよね。気がついたら、お金なくなってるんだよ。警察の人も、仕事で一生懸命やってはくれてるんだろうけど、限界もあるだろうしね」 それから再度東城に質問した。 「でも、俺を疑ってたけど、結局は浜岡のこと調べてくれたんだね」 「実害はなさそうだったから放っておこうとも思ったんですけど、行ったセミナーが、この前2課の知り合いが話題にしてたのとあまりにも似ていたので、確認したほうがいいと思ったんです」

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