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5-9.5 永遠の誓い
外が薄暗くなっていく中、俺たちは宮殿に戻って来ていた。
「俺と、結婚してください」
みんなの前でプロポーズした時のように、白兎 が「ごめんさない」と言うことはなかった。嬉しそうに微笑んで俺の方を真っすぐに見つめると、うんと頷いて迷わず応えてくれたのだ。恋人としての期間も短かったけど、海璃 と白兎として過ごした、かけがけのない時間があるから。
子どもの頃の約束が、今になってはたされるなんて奇跡だって思う。
海鳴 の指示だろうか。宮殿は最小限の従者しかおらず、青藍 の部屋のまわりには人の気配がなかった。いつも通りにいたとしても、俺は気にする余裕もなかったかもしれない。
灯りは寝台の近くにある一ヶ所だけ残して、他は消した。灯りが気になって集中できなかったら嫌だし、このくらいの方が落ち着く。この数日間、白兎と準備してきたこと。
「····な、なんだか····へんな、感じ」
「まあ、そうだよな。でも、しなちゃいけないからするんじゃなくて、俺たちがしたいからするって考えなら自然だと思わない?」
恋愛イベントでセックスしないとクリアできないなんて、正直どうなの? って感じだけど。ゲームの中の青藍と白煉 は、そういう流れがあって、お互いの気持ちを確かめ合うように身体を重ねるんだよなぁ。もちろん、そこには白煉の好感度が関わっていたり、条件はあるわけだけど。
こうして現実として改めて向かい合うと、そういう気持ちがどんどん強くなっているのも感じる。白兎に触れたい。キスしたい。最後までしたい。そう思うのはきっと、自然なことなんだと思う。
白兎も、同じ····みたいだな。
「俺、このゲームのキャラの中で青藍が一番好きって前に言ったけど。俺自身が白煉として青藍とどうにかなっちゃうなんて、考えてもみなかったし、正直、怖いって思ってたよ?」
指を絡めて、見つめ合って。
「だってそうでしょう? 推しキャラだからって、恋愛関係になれるかっていったら、それは別の話で。俺が好きなひとは、ずっとひとりだけだったから」
白兎の気持ち、わかる。俺も白煉が白兎だったらいいのに、って思いながらも、青藍として愛せるかどうかは自信がなかった。ゲームとして攻略対象の好感度を上げて、自分を好きになってもらう後ろめたさ。その気持ちに反して、白兎を重ねて白煉を誰にも触れされたくないって考えたり。傷付けたり。酷いことをした。
白煉が白兎だって知らないままだったら、この最後のクリア条件を達成できる自信がない。好意はあっても、それは愛じゃないって。愛のない、ただ身体を重ねるだけの関係なんて悲しすぎるだろう?
「せ、青藍に····どうにかされちゃったら、どうしよう、とか妄想はした、けど」
「で? 今まさに青藍にどうにかされそう、だけど? それについてのご感想は?」
自分の帯を解き、上衣を脱いでいく。躊躇うことなく上半身をさらした俺を見上げて、
「うぅ······いじわる、」
と、恥じらう白兎、可愛すぎる····。
中身はどうあれ、俺たちは青藍と白煉に違いはない。それでもこうやって惹かれ合えるのは、見た目じゃないってことだよな? 似せて作られたキャラではあるけど、実際は俺たち自身ではないから。
「ご褒美を目の前にして、ずっと我慢してた俺を褒めてくれる?」
抱き寄せて、肩に顔を埋める。すぅと白兎の匂いを堪能して、ますますテンションが上がった。白煉の身体から香るこの匂い、好きなんだよな。
「····そ、そういえば、お風呂入ってない」
「いいよ、別に」
「でも、いつもお風呂入ってからするのに····へんな臭いしないかな?」
「いい香りしかしないけど?」
「あ、でも、ほら、汚い····し」
白兎の心臓、ばくばくしてる。身体もどんどんあつくなる。心の準備、できてないのかな? でも、俺はもう、限界で。そんなこと気にもならない。
「汚くなんてないよ? ぜんぶキレイだ」
俺はそのまま白兎を寝台に仰向けにゆっくりと寝かせ、見下ろす形でそう言った。白煉は綺麗だ。髪も瞳も唇も身体も、ぜんぶ。
「····ん、······はあ、····ふっ······か、かい、り····くる、し、」
余裕なんてないんだって。
優しくしたいけど、ゆっくりしてあげたいけど、ちょっと無理かも。
息をする間も作ってあげられないくらい、深く口付けを交わした。柔らかくてあたたかい白兎の舌と自分の舌を絡めて、その甘さにくらくらした。甘いのは苦手だけど、この甘さは痺れるくらい快感を与えてくれる。
唇を重ねたまま、白兎の漢服を脱がしていく。ゆっくり帯をほどき、合わさっている衣に隠されている肌を剥き出しにして、白い肩から下の方に少しずつ手を滑らせて。小さな胸の上にある突起を親指で擦りながら、弄ぶように立ち上がらせていく。
俺が必要以上に触っているせいでぷっくりと固くなっていく突起に舌を這わせると、白兎の身体が大きく震えた。
「や····やだ······それ、や····だよ····っ」
開 けた衣を握り締めて涙目で訴えてくるが、俺の行為そのものを止める気はないみたい。中途半端に衣を纏っている状態で、俺に触れられるのが白兎は好きなんだって、知ってる。この数日間、肌をぜんぶさらすのは恥ずかしいらしく、集中できないことも知ってる。これが一番、興奮するってことも。
解いた赤い帯を寝台の隅に無造作に置き、白兎から視線を外すことなく右脚を持ち上げ、太ももの内側に強く吸い付いて、赤紫色の痕を付ける。前に付けた痕が薄くなっていたから、これでまた俺のものだって印になる。
こんな場所、本人以外誰もみないから、白兎がこの痕を目にする度に、俺にされたこと思い出してくれたら嬉しいな。
「一回抜いたほうが良さそう、」
すでに立ち上がっている白兎。小さくて可愛いそれをそっと掴み、俺はそのまま自分の口に含んだ。
「あ····ああ······や····なん、で····くち、やだ······、」
右脚を持ち上げたまま、俺は白兎を堪能する。こんなこと、他の誰でもない、白兎にだからできるんだからな?
びくびく。
俺の口の中に広がった生あたたかい液体と苦み。それを含んだまま、さらにその下にある小さな蕾に少しずつ塗り付けていく。とろとろと白濁が蕾に注がれていく様は、なんだかいけないことをしている気分。
「な、んで····こんなの、今までして、ない、のに······、へん、になる」
口でするのも、こうやって舐めるのも、はじめてしたからな。
ふたりで練習していたときは、こんなことしてなかったし。
「でも気持ち良かっただろ? 俺もはじめてしたから、自信ないけど。白兎のその反応でじゅうぶん満足」
「······これも、BL本にあったの? こいうの、あんまり見ないっていって、たのに? こんなえっちなの····みてたの?」
見てないといえば嘘になるけど。たまには欲しくなるじゃん。
「みてたよ? 白兎と、いつかこんな風にしたいなぁって思いながら」
「え、····俺と? ······する、ため?」
というか、妄想するため、だったんだけど。
まさか本当にする日が来るなんて夢にも思わなかった。
「いいから、集中して? 指、入れるよ?」
新しく手配した潤滑剤も使って、今度は指でかき混ぜるように中をほぐす。最初は一本入れるだけでも痛がっていたのに、今はとろけるような顔で気持ちよさそうにしている白兎が愛おしい。
「痛くない? も、俺の、挿入 れても平気?」
「わ、わからない、けど····い、いいよ······俺も、海璃と、ひとつになりたい、から」
とろとろとになっている白兎の蕾に俺の先を擦りつける。ゆっくりと、ゆっくりと、中へ入っていく。やっぱりきつい。締め付けられるような快感が全身にびりびりと伝わって来て、眩暈で意識が飛びそうだった。白兎の身体が強張っているのがわかる。
「怖、い? ごめ····俺も、もう、余裕なくて····でも、俺の、ぜんぶ白兎の中に入った、よ?」
入れたまま、覆い被さるようにその細身を強く抱きしめて、より深く繋がっているのを感じながら。おずおずと背中に伸ばされた手に安堵する。
「····こわく、ないよ? 海璃、好き······海璃がしたいように、して、いいよ」
白兎、そうやって俺を煽ってるけど、気付いていないんだろうな。
もっといっぱい声を聴かせて欲しい。でも、その唇を塞いで、時折漏れる艶めかしい喘ぎ声を聴くのも好きなんだ。
「····ふ······んんっ····はあ、····かい、りも、きもち、····いい?」
「うん····白兎のなか、とろとろであつくて····俺、もう、」
ふたり、ひとつになって融けるみたいに。俺たちはその夜、今までの時間を埋めるように何度も身体を重ねた。
その度にとろけそうな表情を浮かべる白兎に魅入られる。心も身体も繋がったかのように、いつまでもあたたかくて。
気付けば抱き合ったまま、眠っていたんだ。
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