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「やはり受け取って貰えなかったか⋯⋯」
「申し訳ありません。うちの大河が⋯⋯」
「いや、いい。私がいなくなれば気が変わるだろう」
なんてことないと姫宮のことを安心させるような微笑を浮かべる。
そんな顔を見せられてしまったら、何も言えなくなってしまう。
「ところで、 一つ訊きたいことがあるんだが。愛賀の誕生日はいつだ」
御月堂は何気ないことを訊いただけだ。
だが、姫宮の心臓は跳ねることとなった。
「⋯⋯どうして、そのようなことを」
「大河の誕生日会をしていたら、愛賀のことも祝いたくなってな。聞いてはならないことだったか?」
「いえ、そういうわけでは⋯⋯」
「私もぜひとも知りたいです! 姫宮様が産まれたことに大いなる感謝《おいわい》したく⋯⋯!」
意気込んで言う安野に曖昧な笑みを浮かべる。
「気持ちはありがたいのですが⋯⋯」
「ほら、また困らせていますよ。それよりも安野さん。こちらをやってください」
「だって、聞きたいじゃない!」
やだやだと子どものように駄々をこねる安野を半ば強引に連れて行く今井に心の中で感謝しつつ、安堵してしまっていた。
「愛賀。自分の誕生日を祝ってもらう資格はないと思っているのか」
「そういうわけでは、ありませんけど⋯⋯」
見てくる視線に気まずさを覚え、目線を落とす。
祝われるのは素直に嬉しい。
この身体が誰かのものになった時からずっと誰にも祝われなくなってしまったから。
改めて産まれてきて良かったんだと思えるから。
でも⋯⋯。
"こんなこと"は言えない。
喉まで出かかっていたものをぐっと無理やり飲み込んだ。
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