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「⋯⋯愛賀のタイミングでいい。言いたくなったら言ってくれ。いつでも祝う準備はできているからな」 「⋯⋯はい」 眉を下げ、悲しげな姫宮を慰めるように頭を撫でた。 その気遣う優しさが今は痛い。 「⋯⋯?」 その時、服を引っ張られたような気がした。 何か引っかけたわけでも、自分で引っ張っているわけでもない。 と、その引っ張っている相手と目が合った。 目線を落としたままであったが、いつの間にか目の前にいることも気づかないなんて。 「⋯⋯大河、どうしたの?」 「きゅうにおじゃましてすみません。たーちゃんがままのところにいってしまったので⋯⋯」 代わりに答えてくれ、申し訳なさそうな顔をする伶介に「大丈夫だよ」と小さく笑った。 「それで、大河はどうしたの?」 しゃがみながら訊ねた時、キスされた。 「⋯⋯⋯」 今、何が起こったのだろう。 突然大河がやってきて、姫宮に用があるのだろうと膝を着いて訊こうとしていたはず。 それなのに何故、唇に感触が。 前屈みになったから、たまたま当たってしまったのだろうか。それにしてもそんなピンポイントに当たるものだろうか。故意にやったとしか。 故意にやったとしても、大河がそのようなこと──⋯⋯。 急なことに状況が追いつかない姫宮が放心としている傍ら、安野達が騒ぎ立てていた。 「大河、お前⋯⋯」 声色からして複雑な感情をしていると分かる御月堂に見せつけるように、そのままぎゅっとしてきた。 大河の前でキスをしたことがあっただろうか。 御月堂への気持ちが一瞬でも揺らいでしまって、不安と焦りから場をわきまえず、キスして欲しいと言ったことはあったが、その時だってしてはない。

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