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7.
賑やかだった昼間の出来事を思い出しつつ、鏡の方を向きながら歯を磨いていた。
一時は自分のせいで台無しになってしまうかと思った出来事も何事なく無事に終わって、本当に良かったと思った。
大河も皆からもらったプレゼントを大層気に入ってくれたようで、アニメを観終え、伶介らと別れを惜しみつつも、その後は編みぐるみを二つ持っては滑り台を一緒に滑ったり、お絵描きをしていた。
夕飯だと言っても止めようとしない大河に、安野からもらったカトラリーセットを見せると、それにつられて食べに来た。
安野が他の人達に散々言われていた物を釣ることをしてしまったことをしたが、そうでもしないといつになっても食べてくれないから仕方ないことだと、心中を察した小口に言われた。
何はともあれ、食べてくれた我が子の姿を思い浮かべた時、笑みが零れた。
と、鏡でその表情を見る形となり、不思議な気分になった。
こうして見ると、一応自分としては表情が出ているのだと思えた。
これなら皆に変と思われないはず。大丈夫。
愛しい我が子の次の誕生日はまだかとあまりにも気が早いことを思っていた時。
──愛賀の誕生日はいつだ。
御月堂の言葉がよみがえる。
誕生日は長らくしていなかった。
誰かに訊かれるまで忘れていた。
というのもあるが、その忘れていたというのが祝うことだけならまだしも、自分の誕生日がいつなのか忘れてしまっただなんて。
風俗の頃から心を殺し、代理母の時も所詮オメガだから、一度の仕事で高額でもらえるからこのようなことをしているのだろうと心のない言葉を言われてもない心には傷つかないと思っていた。
けれども、オメガでもしていいんだと思えたものが、自分が代わりに成し遂げようとしていたことを真っ向から否定された時、それがオメガとして産まれたことも否定されたと同意義に思った時、祝われる日を忘れてしまった。
こんな情けないこと言えるはずがない。
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