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確かにその通りだった。 姫宮と一緒に暮らしてない間にきちんとしていた身の回りのことさえもここ最近は疎かになってしまっていたのだから、これはさすがに言うべきだとは思う。 と、嘲け笑う小口にすぐに機嫌が悪くなった大河は姫宮からひったくるように歯ブラシを奪うと、自分で歯を磨き始めた。 大体は小口に何言われようが絶対に姫宮にやらせていたのだが、今日は腹が立ったのだろうか、怒りをぶつけるように雑に手早く歯磨きを終えた大河はボードを持って、足早と去った。 「さっさとやれるのなら、自分でやればいいのに」 「小口さん、すみません」 「いえ、いいんですよ。逆に余計なお世話でした?」 「いえ、そんなことは⋯⋯」 「ですが、言った方がいいかもしれませんね。でないと姫宮さまもゆっくりと歯を磨く時間がなくなりますよ」 「はい、そうですよね⋯⋯」 現に磨いている時に来たものだから、磨き終わっていなかった。 言わないと大河のためにはならないと分かってはいるつもりだが、自分なんかよりも先に相手を優先しなければならない環境にいたせいか、そうしないと落ち着かないのだ。 そうしないと酷く痛いことをされるから。 思わず左手首を掴む。 「ま、姫宮さまが言えそうにありませんでしたら、わたしが代わりに言いますけど」 「いえ、そこまでして頂くわけには」 「いやいや、いいんですよ。わたしに言われたらムキになって自分でやろうとしますし、こちらとしても面白⋯⋯やりがいがあるなぁと」 前半が建前で後半が本音であることがありありと分かってしまうのは、彼女とよくいるから人に興味があまり持てない姫宮でも気づいてしまう。 小口が言ってくれるのはありがたい部分はあるが、大河はそれに腹を立てて手を上げることがあるため、彼女が痛がるところや大河がこのままだと将来暴力的になるのではと思い、やはり自分で言わねばならないとは思うところではあるが、すぐに実現できそうにない自分にもどかしさを覚えた。 今も小口に対し、「そうですか⋯⋯」としか言えなかった。

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