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11.
嘘をついてまで祝ってもらいたくはないために何がなんでも思い出さなくてはならないが、何かきっかけとなるものはないだろうか。
自分だという証明の物に明記されてないだろうか。
「それはそうと長々と話し込んでしまって失礼しましたね」
「いえ、私のことは気にせず」
「後ろを見ますと、そうとも言ってられないんですよ」
「えっ?」
小口が見ている鏡の方に視線を向けた。
すると、ちょうど真後ろにある扉の隙間から様子を伺う大河の姿があった。
小口のことで苛立ち、一度は出て行ったもののなかなか自分の元に来ないから見に来たのかもしれない。
「あっ、大河。ごめんね。今、歯を磨いてから行くから」
慌てて歯を磨き、足早と大河の方へ行きがてら「小口さん、おやすみなさい」と声を掛けると「ええ、おやすみなさい」と微笑を浮かべた小口が手を振っているのを見つつ、大河と共に姫宮の部屋へと向かった。
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