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13.
不意に奥さんの後ろに目線を向けると、いつの間にか男がいた。
今までに見たことがないその人は身内ではなさそうであるが、一体何を。
がっしりとした体躯の男が遠慮なく狼狽えている姫宮の前にやってきた。
「え、何⋯⋯」
「あなたみたいなのを見ると興奮するみたいよ。良かったわね、可愛がってもらえて」
「え、なんで、なんでですか」
「まあまあ、俺とイイことをしようぜ」
下卑た笑いを浮かべて、手を伸ばしてくる。
この光景はよく知っている。"あの頃"よく見てきたものだ。
所詮オメガだから、使い捨ての駒のような扱いをされるんだ。
今からどんなことをされるんだろう。逃げようにもこの身重では、すぐに追いつかれてしまうし、お腹の子に影響が及んでしまうかもしれない。
それに反抗なんてものをしたら、怒りを買ってもっと酷いことをされてしまう。
だから、もう諦めるしかない。
堕ろすことも育てることもできないのなら。
お腹の子だけはどうにか守りたかった。
ごめんね。ごめんね。子どもが産める身体なのにここまで大切に育ててきたのに、産まれることができなくて。
迫り来る魔の手から現実逃避するように目を閉じた。
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