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ハッとして、目を開いた。 息が乱れ、背中は不快になるほどに汗でぐっしょりと濡れていた。 目の前には依頼者の奥さんも男もいない。 見慣れた天井が目の前に広がっていることから、あれは夢だと冴えていく頭で徐々に理解し、酷くホッとした姫宮はゆっくりと呼吸を整えた。 "あの頃"のように睡眠を妨害されることなく、近頃は目覚めが良くなったというのに、どうしてあのような夢を見ることになってしまったのだろう。 まるで自分は幸せになってはいけない、と戒めるために見せられているようだった。 誰にも彼にも脅かされることなく、ただ静かに愛おしい我が息子と愛を教え合う人と存在を認めてくれる人達と暮らしたいだけなのに。 オメガだからいけないの。 ゆっくりと半身を起こす。 サイドチェストの上に置かれている時計を見やると、朝食がとっくに用意されている時間だった。 朝食作りをすることもできなかったと深くため息を吐いた。 何故、早く起きられなかったのかと自分を責めていたが、これ以上遅くなってしまったら、せっかく作ってくれたのに台無しになってしまう。 早く身支度を整えて行かないとと布団から出ようとした時、ふと隣が気になり、見やった。 そこには静かに眠る大河の姿があった。 昨夜、ハニワの絵本の読み聞かせをして欲しいとねだられ、それは断ることができないものだと承諾し、読み聞かせをしたものの、一度だけでは留まらず、何度も読み聞かせをしてあげていた。 寝そべり、姫宮にくっついて話を聞いていた大河であったが、ふと見ると目を瞑り、寝に入っていた。 いつの間にか寝た息子を布団に入れてあげて、その様子を眺めているうちに自身も知らぬ間に寝ていたことを思い出した。

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