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「ボード持ってきていたっけ? それで話してみて」 すると大河は、服の裾を掴んでむっと口を引き結ぶ。 それでは話したくないということなのか。 自分の口で言いたいのか。 「大河、ゆっくりでいいから話してみて」 俯いていた息子にそう声を掛けた。 だが、口を引き結んだまま黙りとしてしまった。 何か納得しない部分があるのだろうか。 何と声を掛ければいいのかと思った時、大河が急に姫宮の服を捲り始めた。 「えっ、まっ、待って! 大河⋯⋯っ!」 慌てて阻止する。 急にどうしたのか。 混乱しながらも姫宮は、もしかしたら自分のことを着替えさせたから真似して今度は姫宮のことを着替えさせようとしているのか。 その気持ちはありがたいが、パジャマを着る習慣ができたとはいえ、この下には到底見せられない下着と傷痕がある。 こんなものを見せてしまったら、大河のトラウマになりかねない。 どうにか阻止しないと。 「大河、ママのことを着替えさせたいの?」 うんうんと頷きながらも、手を緩めない。 「気持ちはありがたいんだけど、ママは自分でできるから、ね、だからその手を離して欲しいんだけど⋯⋯」 と言った時、ぱっと手を離した。 言うことを聞いてくれた? 呆気なく離してくれたことに少々驚きつつも、小さく息を吐いているとじっと見つめてくる大河と目が合った。 何か言いたげに見つめてくる。 本当は自分も母親のことを着替えさせたかったというのが、言わずともひしひしと伝わってくる。 けれども、この下の秘密は絶対に見せてはいけない。 「大河、ごめんね」 眉を下げ、謝る。 彼の何かをしてあげたいという気持ちを尊重してあげたいが、こればかりはできない。 「ごめんね⋯⋯」 大河が何か言おうとして口を開いた時。 コンコンと扉を叩く音が聞こえた。

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