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18.

朝食を終え、大河と遊んだ後。 大河を連れて診療内科へと赴いた。 「──姫宮大河君。入ってください」 姫宮の膝の上に座ってお絵描きしている大河を見ていた時、順番がやってきた。 「大河、呼ばれたからお片付けして行こうか」 お絵描きしている最中の大河は集中しているらしく、声を掛けてもなかなか反応をしない。 大河、と再び耳元に近づけて呼ぶと、ビクッとこちらまでもびっくりするぐらい身体を震わせた大河が、目を丸くしてこちらを見上げた。 「ごめんね、驚かせちゃったよね。⋯⋯呼ばれたからお片付けして行こうって言ったの」 申し訳なさそうに言うと、大河はややあって片付け始めた。 靴は自分で脱ぎもしないが、片付けは自分でする時はする。 この違いはなんだろうと持ってきたバッグに入れようとする大河の手伝いつつ、疑問に思っていた。 大河を膝から下ろし、バッグを肩に下げ、「じゃあ行こうか」と手を繋いで、呼んだ看護師がいる場所へと歩いて行った。 「こんにちは、大河君」 扉を開けてくれていた看護師に会釈をしつつも、室内にいる先生と目が合った時、にこやかな笑顔で挨拶してきた。 姫宮は「こんにちは」と返すが、大河は腕を掴んで首を横に振った。 その仕草は姫宮が最悪な再会をし、入院している間、先に大河が安野達にお世話になった際に小口にしていたのだという。 それは何なのか、本人に訊いてみると「いえにかえりたい」。 家ではしないことだからそういう意味なのだと分かったが、初めてではないところでもする仕草なのか。 小口にしていた時、大河にとって帰りたい家があったというのか。 「おやおや、大河君は先生に会うのは初めてじゃないよね。びっくりさせちゃったかな」 「大河、先生を困らせちゃダメだよ」 「大丈夫ですよ。──じゃあ、そこの椅子に座って、最近の大河君の話を聞こうか」 先生に促され、脇にある荷物入れにカバンからボードだけを取り出し、置いた姫宮が先に椅子に座った時、大河は当たり前に膝上に乗ってきた。

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