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「伶介様でしたら、ご自分で脱いで揃えてましたよね。伶介様のお母様はそんなご子息を見て、「きちんとできてえらいね」って、頭を撫でていらっしゃいましたでしょう。大河様もお母様に褒められて、頭をなでなでしてもらいたくはありませんか?」 安野にそのようなことを言われて、たとえそういうのがされるのが好きであっても言うことを聞くのだろうか。 はたして、むくれた顔をして考える素振りを見せた大河は靴を脱いだ。 あ、と声を上げ、驚いた顔をしていた時、靴箱に片付けた大河が姫宮の元へやってきて、頭を差し出してきた。 思わず安野のことを見ると頷いた。 「⋯⋯よく、できたね。えらいね」 いつもより躊躇いがちに撫でると、鼻息を荒くし、どこか満足気な顔をした大河は興奮気味に洗面所へと向かった。 その後ろ姿を呆然として見送った。 「何とか言うことを聞きましたね」 「はい⋯⋯。あ、ありがとうございます」 「なんの! なんの! 私に言われても聞かないと思って、内心ドキドキしたのは正直なところですが、やはり大河様は根が素直ですからね」 「はい。大河はそうなんですけど⋯⋯」 それと同時に譲らない頑固さも持ち合わせている。 それを超えたら言うことを聞いてくれそうだが、場合によっては厳しい道のりだった。 そう、なかなか平坦な道のりにはならない。 「姫宮様、何か気になる点がございました?」 「気になる点⋯⋯」 「あ、先ほどの私の発言がお気に召しませんでしたか!申し訳ありません! 出しゃばり過ぎました!」 「い、いえ! そんなことはありません!」 床にめり込みそうな勢いで頭を下げる安野を慌てて止める。

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