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「とてもありがたいことです。小口さんもそうですが、大河のこときちんと言えていいなと思うんです。私が言ってもなかなか聞いてくれないので⋯⋯。どうしたら言い聞かせることができるのでしょうか」
自分自身でどうしたらいいのかと考えてみても答えは見つからず、それこそ堂々巡りになってしまう。
だったらいっそのこと説き伏せ、話を聞いてくれそうな人に訊ねてみた方が得策だと思い、思いきって訊いてみた。
すると、安野は「そうですね⋯⋯」と考えながらこう言った。
「姫宮様も誰かに褒められたい、頭を撫でられたいという気持ちはありますか?」
「え、あ⋯⋯はい⋯⋯」
「ですよね。私もその気持ちはあります。誰だって褒められたいですよね。部屋を掃除して綺麗に片付いた! 料理が美味しくできた! と自分で満足するのも気分がいいですが、他の人に綺麗になって良かったね、この料理美味しいねと言われましたら、さらに嬉しい気持ちになりますでしょう。ですから、先ほどのように誰かが身近にしていましたらそれを例に上げれば分かりやすいと思いますし、靴を自分で脱いで、靴箱に入れられたら、よくできたね、えらいねと全力で褒めれば良いのかと思います。そうしましたら、また同じことをしたらまた褒めてくれると思って、きちんとするかと思いますよ。ご褒美って嬉しいでしょう? そのようにすれば良いと私は思いますよ」
人は褒められて嬉しい生き物だ。
安野が言うことは確かにと思わせる説得力ある言葉だった。
言ってみた通りのことをしてみようと思う。
「私がアドバイスしたものはごくありきたりなものでしたが、参考になりましたでしょうか」
「はい。例えを出して頂いて分かりやすかったです」
「⋯⋯っ! 姫宮様にそう言って頂けて大変光栄でございます。あぁ、私はなんて幸せなんでしょうか!」
手を組んで天を見上げるように仰いだ安野が大げさに喜んでいた。
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