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それを名残惜しそうにしつつも、テーブルに箱を置いた玲美が口を開け、一緒に中身を見た。
ショートケーキにチョコレートケーキ、フルーツタルトやモンブラン、イチゴタルト、チーズケーキ、ロールケーキ、ガトーショコラ、ザッハトルテと色んな種類のケーキがあった。
ケーキというと、御月堂がお見舞いに来てくれた時、持ってきてくれたことがあった。
あの時の彼なりの優しい気遣いが嬉しかったことを思い出しつつ。
「姫宮さんは何にします?」
「私から選んでもいいのですか?」
「それはもちろん」
ニコッと笑う玲美に「じゃあ⋯⋯」と改めてケーキを見る。
こないだの誕生日の時、大河はチョコレートケーキを食べたから、他のを食べたいかもしれないだろうから、チョコレートケーキにでもしようか。
いや、まだチョコを食べたいかもしれないから、他のにしようか。
それとも無難なショートケーキにでも。
「どれもこれも美味しそうですから、なかなか決められないですよね」
「はい⋯⋯すみません⋯⋯」
「いえいえ! 謝ることなんてないですよ。私もこんなにも美味しそうなものがあったら迷いますし、それに子どもがこれが好きそうだから、こっちにしようか、でも今日はこっちが食べたいって言うかもしれないからあっちにしようかと悩んだりしますよ」
ハッとしたような顔をした。
それは親として当然のことなのだろうか。
「実は私もそうでして⋯⋯。こないだ大河は誕生日にチョコレートケーキを食べたから、今度は違うものがいいのか、それとも同じのがいいのか⋯⋯。それを考えていたら、どれがいいのか迷ってしまいまして⋯⋯」
「ですよね⋯⋯」
うーん、と考え込んでいた玲美が「そうだ」と声を上げた。
「こういう時は本人達に訊いてみましょうか」
「お邪魔にならないでしょうか⋯⋯」
「いいんですよ、それぐらい」
ささ、行きましょと先立って行く玲美の後について行った。
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