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ああいう場面でも機転を利かせて発言力もあるから、子育てもきちんとしていて、だから伶介が年相応とは思えない非の打ち所ない子になるのだろう。
尊敬できると思えば思うほど自分がまともにできなさに劣等感を覚えてしまうほどだった。
「⋯⋯多分そういうのって、やっぱり似たような経験があるからではないかと思います」
玲美が続けてこう言った。
「私、三人兄弟の真ん中っ子なんですが、そこまで兄弟仲は悪くないのですが、やっぱりそれでも喧嘩って起きるものなんです。よく喧嘩しているのが上と下なので、その場を収めるために互いの譲らない主張を聞きつつ、原因を解明し、なるべく二人が納得いくような形にしてきたからかなと思います」
だから手馴れているのだと納得もしたし、玲美には兄弟がいたのかと初耳だった。
「伶介の時も友達がブランコを譲ってくれなかったとか、友達が遊んでいるものを他の子が勝手に取っちゃって、それがきっかけで喧嘩になった時も伶介が宥めようとしたら、伶介とその他の子が喧嘩になったりして、どうしたらいいのかと言われた時もこうしたらいいんじゃないかとそれとなくアドバイスするのにいい経験になったと今は思います。こうして姫宮さんの少しでも役に立っていますしね」
ふふ、と笑いかける玲美にどことなく落ち着かなく、照れ笑いをした。
「でも、そういう経験があったとはいえ、全部が全部納得させることができない時もあったんですよ」
思い出したかのように玲美は言った。
「よくそう思ったのは伶介の時ですね。ご飯の時間になったから、遊ぶのは止めて食べようねと言っても伶介は食べることよりも遊びたい気持ちが多かったり、電車の玩具をところ構わず走らせちゃったり、あとそうそう、何故か湯船に玩具を敷き詰めちゃったりして、何故そうしたのかやってはいけないと私なりに納得するかなと思うことを言っても、きっと本人としては面白くてそうしたのに、自分がやったことになんでそう言われないといけないのかと本人は思っているのかもしれませんね。もう怒って怒って、その時はどうしようと悩みましたね」
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