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え、という顔をしてしまった。 親の言うことをきちんと聞けて、大河に気にかけるいい子だと思っていたが、伶介にもそのようなところがあるなんて。 「意外っていう顔をしてますね」 「あ、いえ、あの⋯⋯伶介くんって、聞き分けが良くて礼儀正しい子だと思ってましたので、そうとは思わなくて⋯⋯」 「そう言って頂けて嬉しいです! けど、何でもかんでも親の言う通りにならないのは子どもの成長にとっては必要不可欠ですので、その時その時は悩みますけど、伶介のためだと思うと今はそんなこともあったねといい思い出になります」 「そうなんですね⋯⋯」 「ええ、ですから雰囲気を悪くさせてしまうかもとか、大河君のことで悩むことが多くなって、自己嫌悪してしまうかと思います。その時は迷わず私に言ってください。悩みぐらいは聞いてあげられますから」 ふわりと笑いかける。 子どもを持つ同士ならではの悩みを分かち合えるかもしれない相手の、安心させるような笑みに姫宮は。 「はい。⋯⋯その時はよろしくお願いします」 微笑み返した。 「さて、私がついつい話し込んじゃったから、皆を待たせてしまっているかも! 行きましょ!」 「あ、はいっ」 慌ただしく足早と、されど楽しげに笑う玲美と共にリビングに戻ると、安野と江藤がとっくのとうに選び終わり、待っていた。 「お待たせしちゃってましたね」 「いえいえ、そんなことはありませんよ」 「ほら早くー。大河さまが飽きちゃってますよ」 見ると、大河は背もたれに寄りかかって今にも落ちそうな座り方をしていた。 「あ、大河、ごめんね」 その大河の隣に座ると、姫宮の膝の上に乗ってこようとしてきた。 「大河、今日は自分の席で座ろうね。きっと食べづらいと思うから」 「⋯⋯」 ぶんぶんと首を横に振る。

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