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「え、大河? どうしたの? 熱!?」 急に具合が悪くなったのかと心配になり、その頬に触れると急に意識を取り戻したかのように強く横に振った大河は、顔を逸らした。 「え、大河⋯⋯? 大丈夫?」 うんうんと縦に振った。 「ならいいんだけど⋯⋯」 心配が残る。それに何故か小口がにんまりとし、いつもの面白がっている顔をしていることから気かがりなことはあるが、本人が大丈夫というのなら今はそっとしておこうと思う。 姫宮にあげた最後の一口で大河は終わり、手持ち無沙汰そうに足をぶらぶらさせていた。 チョコまみれになっている口を拭いてあげようとした時。 電話が鳴った。 真っ先に御月堂かと思ったが、御月堂も玲美と同様に連絡先を交換していた。 とはいえ、これといったやり取りをしてない。 今までと同じように安野を介して電話をしてきたのだろうか。 ところが、取りに行った安野が取ろうとした手が止まり、そのいつもと違う反応が気になった。 「はい、安野です。⋯⋯はい、はい⋯⋯姫宮様はいらっしゃいますが⋯⋯」 ピクッと肩を震わす。 何故、姫宮の名が。 緊張した面持ちで江藤と玲美を見合っていた。 子ども達もその雰囲気を感じ取り、どことなく不安げな顔をしていた。 「はい。ご本人に伝えておきます」 ガチャッと受話器を置いた安野が振り返る。 その顔は強ばっていた。 あきらかに相手は御月堂ではないことを察してか、玲美が「食べ終わったことだし、二人は遊んできていいよ」と言い、伶介も「たーちゃん、あそびにいこ」と手を差し出す。 が、大河は動こうとしなかった。 「あ、大河さま。また口の周りが汚れてますよ。恥ずかしいったらありゃしない」 「⋯⋯!」

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