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えっという顔をし、それから恨めしそうに小口のことを見たのも一瞬で、椅子から下りた大河はリビングを出て行った。
その後を「たーちゃん、まってー!」と伶介が追いかけていった。
「やれやれ、手のかかる」
「言われるまで気づかないのも可愛いですけどね」
「ふふ、そうですね」
立ち上がりながらなんてことない話をする三人がその場から離れていくのを見届けていた時、安野が「姫宮様、少しよろしいでしょうか」と重たい口を開いた。
「姫宮様、急なことで申し訳ありませんが、明日、御月堂製薬会社に行っていただくことになりました」
「え⋯⋯?」
何故そこに。
驚きを隠せない姫宮に予想通りの反応だといった様子に、「そうですよね。無理もないです」と言った。
「今、電話をしてきたお相手は御月堂様のお母様にあたる方でして、その方が突然姫宮様にお会いしたいと申してきまして⋯⋯」
「⋯⋯慶様のお母様が⋯⋯」
御月堂の家族を意識したことがなかったが、改めているのだと思わせた。
しかし、何故姫宮に会いたいと言ってきたのだろう。
御月堂が姫宮との関係を母に言って、それでどんな相手なのかひと目見たいと思ったのか。
御月堂の元婚姻相手との子どもが望めず、代理出産していた間柄がまさかの愛し合う間柄になったことに良くないと思っているのだろうか。
元婚姻相手の家柄がどのくらいかは分からないが、オメガの姫宮と比べることなんて恥ずかしいと思うほどだろう。
だから、息子の相手にはふさわしくないと苦言を呈したいのかもしれない。
そのような立場の相手にもし言われてしまったら、何も言えない。
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