40 / 184

40.

「大河。これはねママが不安がっていたから、安野さんが安心させるために抱きしめてくれていたんだよ。だからね、さっきの言い方は──⋯⋯」 ぎゅっと抱きしめてくる。 「⋯ま⋯⋯ま⋯⋯っ」 すりすりと擦り寄せる。 急に何を、と思ったが、これはきっと自分だって安野みたいに、いやよりも(・・・)抱きしめてあげられるということかもしれない。 恐らく、何故母が不安がっているのか分からないと思われる。 けれども、その気持ちに感づいて、大河なりに安心させようとしているのかもしれない。 そうだと思ったら、無下にできない。 「大河⋯⋯。⋯⋯ありがとう」 膝に頭を乗せる愛しい我が子に身を屈めて抱き寄せる。 不安は拭えないが、いつまでもそんなことを言ってられない。 それに今はひとりじゃない。 どんなことを言われても、帰ってきたら皆がいる。 暖かく迎えてくれる人達がいる。 安野達が慰めてくれる。 だから、大丈夫。

ともだちにシェアしよう!