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41.
うず高くそびえ立つビルを見上げる。
御月堂製薬会社。
出入り口に掲げられているプレートを目で追った。
代理出産の時以来であるこの場にまた訪れる日がくるなんて。
二度目とはいえども自分には不釣り合いで、天にまで届きそうなビルの威圧感に緊張した面持ちで無意識に胸に手を当てた。
しかし、手に伝わる感触がいつもの慣れたものではない感触に、さらに緊張感を加速させてしまうこととなった。
昨日のあの後。
さすがに姫宮が持っている服では行けないと、安野と一緒にスーツを買いに行った。
その際に大河も当たり前に付いてこようとするのを、玲美と伶介が主に協力して気を逸らしてもらったりした。
そのことを端に思い出しつつ、されど着慣れない上に着られているという不格好さにこれはこれで失礼にならないかと表情を曇らせた。
だがしかし、自分の用ではない上、安野自身が忙しいのにその時間を割いてくれたのだから、そう思うのも彼女に対して失礼にあたる。
だからそのようなことを思ってはいけない。
スーツというと、御月堂のことを思い出す。
彼はいつだってスーツを着ていて、他の服を着た方がいいのではと小口に指摘されたこともあったが、堅苦しいと思わせるその姿が様になっていて改めて素敵だと惚れ惚れしてしまうほどだった。
慶様もこの中にいらっしゃるのだろうか。
今頃忙しなく仕事をなさっているのだろうか。
こないだ会った以来、会えてない。
会いたい。
はた、と我に返った。
今はそう思ってはいけない。
この気持ちを無理やり押し込めないと。
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