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「ああ、それとこの際言っておきますが、入院費、代理出産の際に雇った世話係の人件費、今住まわれているマンションの家賃などの金銭面に関してもどう支払うのか考えたことは?」 「⋯⋯え?」 素っ頓狂な声を上げることとなった。 そのような金銭面を考えたことはなかった。 姫宮の身体を気遣ってくれた御月堂と恋人になり、もう会えないと思っていた息子に優しく賑やかな世話係と共に充分なぐらいの家に住まわせてもらっていると思うぐらいで、その面を一切考えたことがなかった。 それにだって、あの部屋でかけがえのない人達と思い出を作ってくださいと言われた。 だから、その気になっていた。 「代理母として役目が果たせなかったあなたはとっくのとうに用済みであるはずなのに、いつまでもお世話になっている理由は何?」 安野達がまた会えるかも分からない姫宮の帰りを心待ちしていた。 御月堂が安心して大河と共に暮らせるところを用意してくれた。 当たり前に受け入れてしまったそれを当初の目的を出されてしまったら、理由なんてないと思わせてしまう。 "用済み"の自分は消えるべきなのではと。 「⋯⋯私、は⋯⋯」 ただ穏やかに暮らしたいと。 「私は⋯⋯」 愛したい御月堂のそばにいたいと。 そう言いたかった。ところが、喉が引っ付いているかのように上手く言葉が出なかった。 解けない緊張とパニックによる胃の不快感と心拍数が上がり、代わりに胃ごと出てきそうなほどの気持ち悪さがあった。 落ち着かないと。怖がってはいけない。 しかし、落ち着かせようとする気持ちとは裏腹にさらに鼓動が速まる。 まるで追い込まれるように。

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