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帰りも袋田に送ってもらい、その足で玄関を潜った時だった。
「ああ! お帰りなさい! 居ても立ってもいられなくて帰ってくるまでずっと玄関で待ってました!」
ああ! 良かった!と大げさな身振り手振りで深く息を吐く安野に呆気を取られていた。
「大河さまも伶介さまと遊ぶ気にならないぐらいにそわそわ落ち着かなかったですよ」
「ま⋯⋯っ」
「松下親子は帰りましたよ」とついでのように言う小口に、待ちわびていた大河が両手を差し出して抱っこをせがんでいた。
数時間しかあそこにいなかったのに、懐かしさを感じる。
開けた先にいた顔ぶれに緊張の糸が途切れ、その場に崩れた。
「姫宮様っ!?」
悲鳴にも似た声を上げた安野にとっさに支えられた。
「急にどうされたのですか! やはり奥様に何か⋯⋯」
「いえ⋯⋯いえ、ずっと緊張していたので、皆さんの顔を見たら急に力が⋯⋯」
「そうでしたか⋯⋯。本当に大変でしたね。無事に帰ってこられて本当に良かったです⋯⋯!」
ぎゅうっと離したくないと言わんばかりに抱きしめる。
安野に痛いぐらいに抱きしめられるが、その力加減が今は心地良かった。
「ま⋯⋯っ、ま⋯⋯っ」
それに浸っていた時、窮屈な姫宮と安野の間を無理やり入ってきた大河が首に手を回して頬を擦り寄せてくる。
大河も帰ってきてすぐに母親の温もりを感じたかっただろうに、その場に倒れてしまったもものだからそれをしてあげられなかった。
「大河⋯⋯ごめんね。⋯⋯ありがとう」
求める我が子に姫宮もまた頭を寄せては応じる。
「いつまでもこうしていたいところですが、せっかくのお召し物が汚れてしまいますもんね。お部屋でお着替えなさってきてください。お腹は空きました? それともお休みになられますか?」
「では、そのまま部屋で休ませて頂きます」
「承知しました」
素直に離してくれた安野とそんなやり取りをして立ち上がろうとした。だが。
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