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48.
「⋯⋯大河。そうしていたらママ、着替えにも行けないんだけど⋯⋯」
「⋯⋯」
しがみつく手に力が加わる。
この様子だとしばらく離れそうにない。
「わけも分からず離れちゃったのが寂しかったんだね。ごめんね」
抱きしめてくる安野との間を無理やりにでも入ってくるほどだ。そうに違いない。
ところが、ふるると首を横に振った。
「寂しかったわけじゃない?」
思ってもみなかった反応に、じゃあなんだろうと考えている姫宮のことをじっと見ていた大河が口を動かした。
声を出そうとしているようだが、空気が漏れるような音しかしなかった。
口の形はというと、半分だけ口を開けるというのを何度も繰り返している。
何かを伝えたがっている。
「⋯⋯い?」
横に振る。
「⋯⋯う?」
ううん、と振る。
何なんだろうか。
そのままあいうえお順に言っていき、さ行に差しかかった。
「さ?」
ううん。
「し?」
うんっと強く頷いた。
それから次に口を閉じて、踏ん張るように両手をぐっと握って主張していた。
分かってと言うように閉じた口を見せつける。
これは恐らく。
「ん⋯⋯かな?」
それでも自信なさげに答えると、途端嬉しそうな顔を見せた。
可愛い。
「し」の次に「ん」と伝えてきた。
寂しいわけでもなく、友達の伶介と遊んでいる時もそわそわと落ち着かなかったと言っていた。
しん、と続く言葉。
すると、大河は口を開けては閉じて、そして手のひらを見せつけてきた。
わ? ではなさそうだ。
何だろうと思っていると、手を握り、すぐに手を広げる動作をした。
「それってもしかして、パーのつもりですか?」
小口がそう言うと姫宮の方を向いたまま、うんと頷いた。
「パー⋯⋯あ、しんぱ⋯⋯心配だって言いたいのかな」
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