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大河はそうだと言わんばかりに目を見開いては、両手を上げてそのまま抱きついてきた。 我が子なりの喜びの表現らしい行動に姫宮も抱きしめ返して応じた。 心配。心配だったんだ。 それもそのはず。周りの大人達が落ち着かなさそうに、現に安野も姫宮が帰ってくるまで玄関で待っていたと言うほとで、そういう気持ちになるのは当然といえるが、こんな小さい子にそう思わせてしまうだなんて。 「心配させちゃったね。ごめんね。大河にとって分からないことだもんね。その気持ちにさせたくないんだけど⋯⋯難しいかもしれない」 「⋯⋯?」 「姫宮様、それってどういうことですか?」 首を傾げる大河に、疑問を口にした安野が驚きと強ばっているような顔を見せる。 本当は姫宮自身も大河のそばにずっといたいが、これは命令だから。 「⋯⋯リビングの方で話します」 会長である梢が何故、今さら姫宮に会いたいと言ってきたのか、そして何故大河に心配かけてしまうのか、出された条件のことも含めてぽつぽつと話した。 その間も当然のように膝の上でいる大河の前で話したくはなかったが、どちらにせよ離れたくないだろうからそのままにしてあげた。 話し終えた時、「⋯⋯そんな話が」と安野が何とも言えない顔をした。 「⋯⋯私、何にも知りませんでした」 「そんなの知らないはずです。第一私達のことに関しましては⋯⋯」 首をゆるゆると振る。 「⋯⋯私は何も知らない無知な子どものままだったんです」 自分がオメガだから、性処理にしか使えないと諦めていた。 が、それは言い訳にしか過ぎず、それに甘えていたのではないかと思い知らされた。 自分がいるだけで周りを不幸にし、その境遇に嘆いて何もかも嫌になっていたけれども、それでも足掻くことはできたのではないかと思うほどに。

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