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54.

受付で名乗ると、首から下げる許可証なるものをもらった。 それを下げ、その足で指定された場所へと向かう。 向かう先は、地下。 エレベーターに乗り、その階を押した。 前は梅上と共にであったが、その時と似たような緊張感と段々地上から離れていく妙な寂寥感と違和感を覚えつつも、圧に耐えながらある階に止まった。 その階だと告げる機械音を聞きつつ、開かれた扉の先に恐る恐るといったように下りた。 下りた先は頑丈な鉄の空間が広がっていた。 窓がなく、電気で明かりがともされているその異質さは、会長の元へ向かった時のあの空間とはまた違った重苦しさを感じた。 早くもここから出たい気持ちに駆られながらも、『研究室1』と書かれたプレートを確認し、その扉をためらいがちに開いた。 「失礼します⋯⋯」 入った先の光景に目を奪われることとなった。 廊下よりも天井が高く、室内が横に広がってはいるものの、先ほど感じた圧迫感はなく、同じように窓らしきものが見かけずとも、初めて来た緊張感が残るものの、ようやく息を吸えるという安心感があった。 室内はどっしりとした台──理科室で見かけるような実験台と呼ばれるもの──が等間隔に並んでおり、その奥に数名の男女が横に広がっていた。 私服らしき服を着ている人もいることから、姫宮と同じ被験者だろうか。 「君も治験参加の方ですか?」 同じ被験者らしき人達の前にいた、白衣を着た男性が声を掛けてきた。 「あ、はい。そうです」 「そうですか。なら、近くまで来てください。今から今日の流れを説明しますので」 そう言うや否やすぐに姫宮から目を逸らし、すでに来ている人達に目を向けた。 白衣の男性と同じように見ていた数人の視線を感じながらも、「はい⋯⋯」と小さく返事し、足早と向かった。

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