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「これで全員揃いましたね。本日は治験に参加してくださり、誠にありがとうございます。私は、ここの研究長を務めております、倉木といいます。初めに言っておきますが、私は皆さんのように第二の性を持たない人間です。もし、発情期になった際も影響されることはありませんので、そうなった際はどうぞ遠慮なく仰ってください」
「ちなみに、私の隣にいる助手である研究員達はオメガとベータですので、ご安心ください」と付け加えた。
ベータよりも少ないが、オメガよりも多いという第二の性を持たない人は噂では聞いたことがあったが、ベータの方が当たり前に多いために噂程度に過ぎない存在かと思ったばかりに少々驚きもあったが、羨ましくもあった。
オメガなんてものになるよりもいっそのことない方が良かった。そうしたら、この人生も変わっていたことだろう。
でも、オメガだったからこそかげがえのない人達、愛しい我が子、そして愛したい人に出会えたのだから、全てが悪かったというわけではない。
「ここに参加されている皆さんは、今日の治験がどういうものをされるかご存知かもしれませんが、簡単に説明します。皆さんが普段服用されている抑制剤。我が社でも販売に至り、ありがたいことに多くの方に服用されている実績がございます。今日はその実用されている薬を服用しての効果と開発中の薬の効果を比べたいがために募った次第です」
会長がオメガ用の薬の効果についての研究だと言っていた。あながち間違っていない。
それに前々からここの抑制剤は服用している。
飲み慣れているものだから、怖くはない。
「では、今から渡します問診票に必要事項を記入してもらい、記入した人から研究員から検診衣をもらって、皆さんの背後にある個室の更衣室で着替えて、問診票を持って、私の後ろにある扉の前で並んで待ってください」
「はい」
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